アステラス製薬株式会社 SakuLab®-Tsukuba
利用者および社員向けネットワークセミナー・イベント

交流がイノベーションの種になる―ネットワークを育む場づくりの歩み

アステラス製薬株式会社のオープンイノベーション拠点「SakuLab®-Tsukuba」(茨城県つくば市)では、多様な思考や価値観、専門性を掛け合わせ、創薬のアイデアと技術を育て、社会実装することを目指している。「咲く」と「桜」に「ラボ」を組み合わせたSakuLabの名に込めたのは、「花開くような研究がここから生まれていってほしい」との思い。その実現には、ラボに集まる人々の有機的なコミュニケーションが欠かせない。そこで2024年に始動したのが、ラボの利用者とアステラス社員の交流の場となるネットワークセミナー・イベント「あすさくセミナー」だ。これまでに計7回を開催した同セミナーは、回を重ねるごとに内容を進化させ、現在では募集開始から間を置かず満員となるほどの人気を集めている。その実施背景やこれまでの歩み、着実に芽吹き始めた成果について、セミナーの企画・運営を担う竹内氏と渡邉氏に話を伺った。

●インタビュイー
竹内健一郎 氏(ビジネスコミュニケーションズ):オープンイノベーション推進施策の企画・プロデュースを担当
渡邉亨 氏(つくばオープンラボオペレーションリード):SakuLab®-Tsukubaのオペレーションを担当

左:渡邉亨 氏 / 右:竹内健一郎 氏

アイデア創出の土壌をつくるネットワークセミナー&イベント「あすさくセミナー」

竹内氏:
「SakuLab®-Tsukuba」(以下、サクラボ)は、オープンイノベーション拠点として2023年にアステラス製薬つくば研究センター内に開設されました。利用者の方々は研究施設をご利用いただけるほか、創薬に関して当社専門家のサポートを受けることができます。また、利用者同士や当社の研究者とのネットワークの機会も提供しており、ここから新しい創薬のアイデアが生まれ、花開いてくれることを期待しています。

背景には、「特定分野に強みを持つ研究者やスタートアップ、中小企業の方々と、製品化のノウハウや広いネットワークを持つ我々のような企業が手を取り合うことで、革新的なアイデアを患者さんにとっての“価値”に変えることができる」との考えがあります。

渡邉氏:
製薬会社はもともとクローズドな世界でした。しかし今では「自社だけで創薬は完結できない」というのが業界の共通認識となっています。創薬の手法や技術的な可能性が広がる中、1社だけで研ぎ澄まされた製品を生み出すことが難しくなっているためです。当社でもこれまで一般的な共同研究やオープンイノベーションには積極的に取り組んできましたが、サクラボではさらに一歩進んだコミュニケーションを生み出し、日本のエコシステムの盛り上げに貢献したいと考えています。

竹内氏:
「あすさくセミナー」は、そうした動きを活性化する土壌づくりを目指す試みです。セミナーの名称は「アステラス×サクラボ」、そして「明日咲く」から名付けました。

サクラボはさまざまな方が利用する場ではありますが、利用者の方々や当社社員を会議室に集めて、いきなり「アイデアを話し合ってください」と言ってもそう簡単に出てくるものではないですよね。まずは会話を始めるきっかけが必要です。仕事から少し離れた場所でお互いのことを知る。気軽な会話を通して親交を深め、その関係性からやがて新しいものが生まれる。そういった機会を提供するのが、あすさくセミナーの役割です。

渡邉氏:
セミナーはつくば研究所内にある食堂で毎回開催をしています。例えば食堂は、利用者の方々と当社社員がいつでも出会える場所ですが、お互いに顔も名前も知らなければ、なかなか会話は生まれません。一方、セミナーで知り合った人が食堂にいれば、自然と声をかけやすくなる。あすさくセミナーには、そうした交流のきっかけづくりを期待しました。

「引き出しの多さ」がJCDを選ぶ決め手に。セミナーに独自性をもたらす企画力に期待

竹内氏:
セミナーの立ち上げにあたり、複数社から企画提案をいただきました。その中からJCDを選んだ決め手は、アイデアの多彩さです。セミナー参加者を募るためには、内容の充実はもちろん、目新しさや楽しさなど、関心を引くような要素が必要です。その点で、JCDの提案には面白そうな企画がたくさんありました。例えばセミナー会場となる食堂の使い方ひとつとっても、我々が思いつかないような手法をいくつも提示してくれ、引き出しの多さを感じました。

渡邉氏:
提案の中に“遊び要素”が入っているかどうかは、重視したポイントです。学習色の強い一般的なセミナーなら、外部でも受講できる。せっかく我々が開催するなら、日本では他にないような、少しユニークなセミナーにしたい。そうした気持ちがあったので、JCDの遊び心ある提案には非常に魅かれました。また、JCDとは提案時の会話も弾み、「この方々となら同じ方向を向いて良いものを創っていけるのでは」とも感じました。

進化し続けるセミナー。過去7回の開催がもたらした成果

食堂が畳敷きの大広間に? ユニークな会場づくりと、会話を生むプログラム設計

竹内氏:
これまで2024年度に3回、2025年度に4回のセミナーを開催しました。その過程で、目的や形式は変化してきました。

2024年度は、参加者のネットワークを広げることを主な目的とし、ビジネスセミナーのような形式でスタートしました。中でも工夫したのは場づくりです。第1回はクリスマスシーズンに合わせ、クリスマス会のような雰囲気で開催。第2回は食堂に畳を敷いて、和室の大広間のような空間に。第3回は卒業式シーズンに合わせて小学校の教室を再現…と、各回でさまざまなスタイルを試しました。「いつもの食堂」を全く異なる空間に変え、会話が弾むきっかけを作ることが目的で、期待どおりいずれも非常に面白いセミナーになりました。同時に見えてきたのは、席が近い参加者同士に限定されたコミュニケーションになりやすいという課題でした。

そこで2025年度は、よりオープンな交流の場を目指し、3つのパートでプログラムを構成しました。
1つ目のパートは学びの時間とし、サクラボの新しい利用者や、オープンイノベーションで目立った活動をしている当社社員に、現在の取り組みや今後挑戦したいことなどを話してもらいました。
2つ目のパートは、仕事から少し離れ、会話のきっかけを提供する時間としました。2025年度はJCDが提案してくれた「つながるを味わう」をコンセプトに、さまざまな“飲み物”の背景にあるストーリーを紹介。初回は「日本茶の世界」をテーマにした体験型のワークショップ形式で開催し、新しい形でお茶文化の活性に取り組むスタートアップの代表にファシリテーターを務めていただきました。第2回以降は、地元つくばのブルワリーやワイナリー、酒蔵から外部講師をお呼びし、異業種からの転身などのユニークな経歴や、挑戦の道のり、つくばへの想いなどを語っていただきました。
3つ目のパートは、参加者同士で自由に会話する時間です。2つ目のパートとつながるよう、その回で紹介いただいた飲み物や食べ物を楽しみながら、気軽な雑談やそれまでのパートに関する質疑応答を通してつながりが生まれる場を作りました。

2025年度 第4回あすさくセミナーの様子


今回は筑波山麓で酒造りを営む「稲葉酒造」様を講師に迎え、酒造りの技法やさまざまな取り組みをご紹介いただきました。講演後は稲葉酒造様のお酒やドリンク、おつまみを囲んで、和やかな中にも活気のある交流会が行われました。

地域の挑戦者のマインドセットが刺激に。研究の外から学びを届ける価値

竹内氏:
振り返ると、2024年は「場」の活用を探るフェーズでした。アステラス つくば研究センターの建物をどう使えば面白いことができるのか、試行錯誤を重ねた結果、自社に合うスタイルが見えてきたことが大きな成果だったと思います。
2025年はそれを土台に、どう「遊び」の要素を取り入れるかを考えました。“飲み物”というテーマは自分たちだけではまず出てこない発想で、JCDの企画力のたまものだと感じます。とはいえ、完全に遊び要素だけで「楽しかった」に終始しないよう、我々からも「少し勉強のパートを入れよう」といった意見を出し、各回のプログラムを形にしていきました。

渡邉氏:
私は遊びに振りすぎて、単純においしい酒蔵を提案して竹内に却下されたりもしましたが(笑)、セミナーの講演にはたくさんの学びがありました。特に勉強になったのは、講師の方々の取り組みと、創薬の現場との類似点です。
講師の皆さんは、互いに情報交換したり、仲間を増やしたりしながらヨコのつながりを広げており、その結果つくばにワイナリーが増えるなど、新しい動きも生まれているそうです。創薬のスタートアップも、ヨコのつながりでどんどん成長していきます。仲間を集め、自身も周囲も成長し続ける姿がとても似ているんですよね。「新しいスタートアップを支援している」というゲストの方のお話も、サクラボの利用者や当社社員にとって参考になるものでした。

竹内氏:
つくばという土地に魅かれ、そこに深く根を張り、地域に愛される企業を作ろうとする生産者の方々のマインドセットは、自分たちのアイデアを社会に実装しようと考えるサクラボの利用者に通じるものがあります。他のセミナーで研究に関する知見を得る機会はあっても、マインドセットについて自主的に知ろうという視点を持つ方は、そう多くはないんじゃないでしょうか。そういう意味でも貴重な学びを得られたと思います。

ゆるやかな交流が育む新しいネットワーク。セミナーが参加者の“自分ゴト”に

竹内氏:
参加者へ行う開催後アンケートの初期と現在の結果を見比べると、参加者の意識の変化を感じます。満足度は当初から一貫して高いのですが、以前は「講演やコンテンツの内容」が評価の中心でした。今はそれ以上に「交流」をあげる方が多く、「新しい交流が生まれた」「何度も参加するうちに友達が増えて、彼らとの交流を楽しんでいる」といった感想が聞かれるようになりました。それは我々が目指したセミナーの姿であり、とてもうれしく思っています。

「次に取り上げてほしいトピックは?」という質問に、具体的な回答が寄せられるようになったこともうれしい変化です。「つくばで活動している人の話をもっと聞きたい」「この人を呼んでほしい」といったリクエストもあり、参加者にとってセミナーが自分ゴトになっていると感じます。社員の意識も変わってきました。今までこうしたセミナーにあまり参加しなかった社員が、自ら申し込んでくれるようになってきました。

渡邉氏:
今は参加者一人ひとりが個々に活性化している段階なのかなと思っています。次は彼らがつながっていくフェーズを実現できるよう、引き続き取り組んでいきたいですね。

竹内氏:
ありがたいことに、2025年度のセミナーは募集開始から1週間ほどで満席になることもあり、開催後アンケートでも満点に近い総合評価点をいただきました。利用者の方々も当社社員も、これまで隣の人が何をしているのか気になりつつも、知る機会がなかったのではないでしょうか。セミナーなどの機会があっても、かしこまった雰囲気だとなかなか参加しにくいですよね。あすさくセミナーは、ゆるい雰囲気の中で興味のある話題に触れられることが、多くの方がご参加くださる理由の一つになっているように感じます。

自分たちだけで悩まない。コミュニケーションのプロ・JCDとの協働が生み出す新たな可能性

竹内氏:
おかげさまで好評をいただいているあすさくセミナーですが、同じ成功モデルを続けていてはいずれネタ切れになりますし、参加者にも飽きられてしまいます。次のあり方を見つけていくうえで、JCDというパートナーの存在は非常に心強いです。この手のものは、一人で考えていてもなかなか答えが出ません。自分たちとは異なる外部の視点を入れ、アイデアを壁打ちすることで、これまでにない発想が生まれると思います。JCDにどこまで遊び心を出してもらえるか、我々がどこまでそれについていけるか。これが、セミナーを面白くしていくポイントだと考えています。

アイデアの実現を支えてくれるのもJCDです。外部講師との折衝から備品の手配、当日の進行まで、ほとんどお任せしています。結構無茶なリクエストにも応えてもらっていて、本当に助かっています(笑)。2026年度は開催回数を増やす予定ですが、「アイデアさえあれば実現できる」と思えるのは、JCDがサポートしてくれるからこそです。

渡邉氏:
コミュニケーションに関して課題を感じている企業は多いのではないでしょうか。我々も悩みを抱える中で、最初は自分たちでやってみようとしましたが、JCDとご一緒してみて本当に良かったと感じています。早い段階でプロに相談し、協働・共創していけるパートナーを見つけることが大切だと思います。

竹内氏:
我々も、創薬のスタートアップの方々に「ともにいいものを創りあげましょう」とよくお伝えしています。あすさくセミナーも、JCDと壁打ちを繰り返しながら一つのものを形にできたことが成果につながっていると感じます。今生まれつつある参加者同士のネットワークの芽が、いつか新しい協働・共創へと花を咲かせていってくれたら、何よりうれしいですね。

お客様情報

アステラス製薬株式会社

所在地
東京都中央区日本橋本町2-5-1
設立
1923年
URL
https://www.astellas.com/jp/
資本金
103,001百万円
従業員数
14,099名 (2026年3月期末時点、連結ベース)