変わりゆくイベント。その未来を探る。 [プロ対談]EventHub×JCDが創るイベントマーケティング

JCD X EVENTHUB 対談
新型コロナウイルスの世界的な流行は、イベント業界においても多大な影響を及ぼし主催者・参加者、そして運営サイドにも大きな変化をもたらしました。なかでもマーケティング目的で開催されるイベントおいて、オンライン化が急激に加速したことは、ニューノーマルにおける新しいイベントのカタチを提起したと言えるでしょう。

今回は2021年8月にJCDとパートナーシップ提携をした日本を代表するイベントマーケティングプラットフォーマーである株式会社EventHub 代表取締役の山本 理恵氏をお迎えして、株式会社JTBコミュニケーションデザイン 執行役員 コーポレートソリューション部 部長の町田 忠と対談を行いました。イベントに関わるそれぞれの立場・観点からウィズコロナ・アフターコロナ時代におけるイベントマーケティングのゆくえについて、それぞれの想いを語り合っていただきました。


PROFILE 紹介============================================

山本 理恵 氏
株式会社EventHub 代表取締役
米国ロードアイランド州ブラウン大学経済学部・国際関係学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー サンフランシスコ支社に入社し、金融・医療・パブリックセクターのプロジェクトに従事。在籍中に認定特定非営利活動法人Teach For Japanへ出向する。2016年に株式会社EventHubを設立。

町田 忠
株式会社JTBコミュニケーションデザイン 執行役員 コーポレートソリューション部 部長
早稲田大学政治経済学部卒業後、JTBの前進である日本交通公社へ入社。その後、コミュニケーション事業部長、JTB本社法人事業 チームマネージャーなどを歴任。JTB本社では、JTBグループの広告、イベント、HRなどコミュニケーション事業を担当していた事業会社を統合する事業会社である、JTBコミュニケーションデザインの設立にも従事。2017年からはJCDの執行役員として、企業課題解決のためのコミュニケーション事業の全体推進責任者として、社会課題に資するソリューション開発、企業課題に寄り添うパートナーであり続けるために日々営業責任者として、事業推進中。

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(文中敬称略)
※社名・肩書きは対談開催(2021年10月)当時のものです。


テクノロジーで、つながりを創る。

司会
EventHub様が2020年4月にオンラインイベントツールをリリースした経緯やJCDとパートナーシップを締結した背景を教えてください。

山本
2016年の創業当時から、私たちは一貫してイベントマーケティングテクノロジーの領域で事業展開してきました。コロナ禍以前は、オンライン・オフラインをそれほど意識せずに、テクノロジーを通してイベントマーケティングの価値を高めていくことに主眼を置いてきました。その当時からこの仕事を通じて実感していたのは、“接点やつながりを創る”ことの大切さです。イベントでセミナーを受講したり、イベントでのセミナー受講やチラシ等からの情報収集はもちろん大事ですが、イベントの価値は、人との直接の出会いにあると思っていましたから。情報収集やイベントの情報検索といった機能においては、オンラインを活かすことで利便性が向上すると考えていました。いずれにせよオンラインとオフラインそれぞれの良さを併せ持ち続けていくことが今後も求められるでしょう。

2020年に新型コロナウイルスが流行するまでは、私たちはテクノロジーを活用して、オフライン開催のイベントに関わる人や企業間のコミュニケーションをオンライン上で促進させるイベントツールの開発を主軸にしていました。現在はオンラインイベント開催のプラットフォームに変化をしていますが、創業当時から、“つながりを創る”という目的に集中して、機能開発・事業展開を重ねてきました。

今後、ハイブリッド開催のイベントが増えることが想定される中で、オンラインの良さとオフラインの良さを融合させ、より高いマーケティング効果を発揮できるイベントプラットフォームが現在の「EventHub」です。お陰様で現在、300社以上のお客様にご利用いただいております。

JCD様とのパートナーシッププログラム締結の背景には、私たちはあくまでプラットフォーム提供者だという考えがあります。イベント運営に関してはプロではありません。それぞれの得意分野をもつ企業とパートナーシップを結び、お互いがもてる能力を発揮し、顧客支援をしていくことで、顧客に最大限の価値を提供できれば良いと考えています。

JCD様とは実は以前ET&IOT展でご一緒させていただくなど、オフラインが主流の時代からお世話になっていたので、真っ先にパートナーシップ候補として頭に浮かびました。


JCD EVENTHUB 対談
株式会社EventHub 代表取締役 山本 理恵 氏

町田
コミュニケーションの手段は目的が達成できれば、オンラインでもオフラインでも良いでしょう。今の時代は選択も自由にできます。ただJCDではサイバー上のコミュニケーションといった分野では、明らかに遅れていました。ですから自社で足りない部分は、EventHub様の力をお借りしてパートナーシップを結んでお互いが補完しあえば良い。それがお客様のメリットへつながりますからね。

これまでも学術集会や国際会議、トレードショー、ビジネスマッチングといった展示会の領域において、必要なポイント毎にオンラインは使っておりましたが、どうしても補助的なツールとしてしか扱われていませんでした。それが時代の移り変わりやお客様のデジタルへの意識がより高くなったことも、オンラインを受け入れる素地になったと考えております。

私どもJCDはイベントのPCO(企画・運営)の役割を担っております。ただし、単なる運営者に始終するのではなく、参加される企業の課題や本質的なニーズをしっかりと受け止めて、伴走型のソリューションを提供できるようにしていかなければならないと思っています。そうした点に立脚すれば、オフラインでもオンラインでも、顧客メリットになる手段を用いれば良いのです。選択肢が数多くあるので、シームレスにお客様のニーズやオーダーに応えていくことが今後も求められるでしょう。

今回のパートナーシップ締結によって改めて実感したオンラインでイベントを開催する良さは、参加者のデータをあらゆる点で取得できるようになったことです。これらのデータを介してトラッキングができる点になによりもメリットを見出しました。ここ数年、実際にお客様もオンラインを体現する機会が増えたことにより、こうした利点は実感していると思います。

企業イベントを取り巻く変化とは。

司会
新型コロナウイルスの流行により、企業イベントを取り巻く環境やイベントそのものはどのように変わりましたか?

山本
プラットフォーム提供者の視点で過去を振り返ってみると、2020年2月の新型コロナウイルスの感染拡大によるイベントの自粛が始まって以降、イベントは完全にオンライン一択になりました。イベントの形式やイベントでの体験は、全てオンライン開催に変化をしたことで相当に変わったと思います。オンラインへの移行のメリットとしてイベント開催の地理的制約がなくなったことが挙げられます。例えば、オフラインのみでの開催であれば東京で開催されるイベントでは、参加者の多くが首都圏の方々に限定されます。オンライン化されたことで地域・場所の制約がなくなり、全国各地からの参加者を募ることが可能になり、参加者数だけを見ても2倍くらいに増えた企業様もいらっしゃいました。

海外から渡航費用や時間をかけて来場する必要もなくなりました。オンライン開催では、Web上でログインすれば世界のどこからでも、すぐに世界各地のイベントに参加ができますから。オンライン時代ではこのように、登壇者・出展者・参加者のリーチが大きく広がったと実感しております。

また、これまで、イベント主催者はある程度大きさのある会場を確保しなければならなかったり、時間と労力、そして大きな費用をかけて準備する必要があったりしました。しかし、オンラインにシフトしたことで、今までイベントを主催していなかった企業でも、チャレンジができるようになったのです。つまり、イベントを実施するハードルがかなり低くなりました。イベントの開催期間についても、短期間に制約する必要がなくなり、1週間~1年間といった常設のイベントも登場しています。もはやイベントの時間軸も大幅に変わったと言えるでしょう。

町田
時間や場所に拘束されずにコミュニケーションできるのは、オンラインならではですね。今、山本様がおっしゃられたように、タイムラインの変化が確実に起っています。フィジカルで大型なイベントならば、宴会場や会議室を押さえなければなりません。その際にかかる手間も時間も、これまではどうしようもなかった。それがオンラインで一変。実施の間際化が顕在化するとともに大型イベントが小型化して且つ複雑化する傾向にあります。一方で小型化、複雑化するかわりにコミュニケーションがより濃密になりましたね。


JCD EVENTHUB対談
JTBコミュニケーションデザイン 執行役員 コーポレートソリューション部 部長   町田  忠
山本
イベントがオンライン化されたことによって、情報格差は確実に是正されたと思います。

町田
一方では、リアルなコミュニケーションが重要視される世界もまだまだあります。例えば経営層が関与するコミュニケーションなどは、リアルで集まり五感を刺激しあうことで新たな価値を生み出すという考え方により、対面開催へのニーズも多く、結果として、コロナ禍のためイベントが延期になるという残念な事態も。

山本
オンライン・オフラインの状況に応じた使い分けが必要になったと捉えています。オンラインならではの良さがある一方で、例えば、VIPの空間作りや「おもてなし」などのリッチなコミュニケーションについては、やはりオフラインに軍配があがると思います。ウィズコロナ・アフターコロナの時代では、イベントの目的に合わせて開催方法を選択することが、より一層求められるようになるのではないでしょうか。

町田
いずれにしてもオンラインを活用したイベントは、時間や場所の制約から自由になります。
結果として情報格差や技術格差を埋めることに貢献します。これは今日本の国策にもつながる地方創生でも生きてくるはずです。教育・医療・防災といった面で情報不足で遅れをとる地方がオンラインを活用することで、社会型課題解決にもつながっていくと感じております。

企業イベントを取り巻く環境に影響を与えるトピックスとしては、たとえばSDGs課題でもある「誰一人取り残さない」といった問題に対しても、先ほど山本様も情報格差が是正されたとおっしゃいましたが、オンラインイベントには解決の糸口があると思います。これまで物理的な要素で参加ができなかった障害者が、オンラインによるビジネスイベントに参加することで、その質の向上に寄与することもあるはずです。

 

「EventHub」の特長

司会
イベントプラットフォーマーとして、今後EventHubの開発・展開で大切にしている点は?

山本
私たちのサービス「EventHub」には、大きく分けて2つの画面があります。一つ目は、お客様がイベントの準備・運営・企画・分析をする際にご利用いただく管理画面です。もう一つは、参加者や出展企業が実際にイベントに参加する際に利用する画面で、ライブ・動画配信、事前登録やアンケート回答といった機能を備えています。どちらにも共通して言えるのは、“シンプルでわかりやすい“ということ。インターフェイスと操作性にこだわっています。

 

EVENTHUB無料デモ 管理者画面
EventHub管理画面(左:イベント情報/右:ブランディング)


EVENTHUB 無料デモ 参加者画面
EventHub参加者画面(左:ライブ動画配信機能/右:ブース出展機能)

山本
特に企業がマーケティング施策としてイベントを実施する場合には、獲得リード数がイベントの成功・評価に直結することも多いので、なるべく画面遷移を少なくして離脱率を抑えることが重要になります。プラットフォーム自体の導線がわかりにくいと、参加登録時・イベント視聴時・アンケート回答時など、オフライン開催時にはなかったタイミングでの離脱を招きかねません。そのため、初見の方でも迷わずに登録を完了し、確実にイベントにご参加いただけるようなわかりやすさを重視しています。

また、オンラインの利点を最大限に活かす機能の開発を日々進めています。例えば、イベントを開催する度にデータを蓄積して参加満足度を高め、次回のイベントに活用するなど、マーケティング活動を効率化するための機能開発には特に注力しています。今後も、基本の導線はなるべく変えずに機能の開発を続けていく方針です。見た目は変わらないですが、EventHubでできることが実はどんどん増えていく形を目指しています。

町田
柔軟性も必要ですが、プラットフォームを開発する上では軸がぶれてしまうと本末転倒の結果をもたらしてしまいますからね。

私どももPCOとしての役割をしっかりやることはもちろんですが、今後は顧客・参加者・出展者のマーケティング領域まで踏み込んで、目配りをしていく必要があると思っています。最終的にはデータをスムーズにCRMツールなどと連携させ、顧客側が管理してPDCAサイクルをまわし、ROIがしっかりととれるようなお手伝いをJCDでしていきたい。データが取得できるようになったわけですから、イベントのコンテンツとして顧客セグメントに利活用できそうなデータ取得方法を織り交ぜたゲーミフィケーションの要素など、企画の部分でも積極的に提案していければと考えています。
ですから顧客のマーケティングやブランディングをする上で、EventHub様との協業体制をとってやっていければと考えております。

山本
イベントを通じてお客様のビジネスの課題を解決していくことを目指していきたいですね。

JCD EVENTHUB 対談


司会
企業イベントは、今後どのように変化するのか、またどうあるべきだとお考えですか?

山本
これまでのオフラインイベントは、いわゆる「空気と紙を媒介にしていた」状況だったと思います。このままだとタイムリーなデータ分析は難しく、膨大なコストが必要になります。開催をはじめとしたイベントに関する多くの工程をオンライン化することで、より効率や効果を求めることができる土壌ができたと思います。

今後はオンラインやオフライン、さらにハイブリットなど、イベント開催の形式ごとに検討すべき要素が異なってくることでしょう。イベント開催の目的は、ブランディングなのか、リード獲得目的なのか、あるいは商談創出なのか。カスタマージャーニーのファネルのどこを目的とするのか、マーケティング・営業・事業全体、あらゆる観点から自社の課題を理解した上で、イベントに求める目的は何か、立ち返えって考えることが大切です。イベントを開催する側には、より目的思考が求められるようになります。

町田
今後ますますイベントには、費用対効果が求められます。オフラインとオンライン双方の効果比較についても私たちはしっかりと押さえて置く必要があるし、お客様にサジェストできるようにしておかなければなりません。

山本
今後、イベントを開催する際にはオンライン・オフライン・ハイブリット、あらゆる開催形式を模索することになるでしょう。どの様な形式であっても、イベントの効果をその都度検証していく姿勢が大切ですね。

 

今後の抱負

山本
今後も様々な機能を開発して、イベントプラットフォーム「EventHub」の価値を高めていきたいと思っています。誰もが簡単にイベントを開催できるようにすること、参加者・出展者・登壇者の体験をより高めること。そして、オンラインの利点を最大限に活用して、イベント主催者運営企業様が適切なデータを取得し、今後のイベントの成功につなげられるようにすること。こういったことを重視しつつ、今後も様々な新規機能を提供できるよう、引き続き尽力してまいります。

そして、EventHubを導入いただくことで、人にしかできないことに注力していただけるようにしたいです。例えば、イベント中の「おもてなし」やコンテンツ内容の企画、イベントを通じた価値体験の提供など。EventHubを導入いただくことで、イベントの運営の工数が削減でき、時間や労力に余裕が生まれます。イベントプラットフォームとして幅広く機能を開発していくことで、主催者様にはイベント企画そのものに集中していただけるようなイベント開催の体験をご提供したいと思っています。

今回のパートナーシップ連携により、JCD様が強みとするイベントでの体験作りやイベントの企画・運営と合わせて、イベントプラットフォームを提供できるようになりました。JCD様とEventHub両社が交わることで、お客様に新しい価値提供ができると考えています。


町田
改めて強調したいことは、今後のイベントはリアルとオンラインをそれぞれ主催者の意思で選択できるようになります。オフラインのリアルイベントの場合はアナログでの開催が主流で、参加者のインサイトを正確にとらえることができませんでした。オンラインになったことで、主催者にとって必要なデータをトラッキングできるようになりました。そのデータがCRMに活用でき、より適確なマーケティングを行えるようになり、さらにはブランディングにつなげられるようになったことはとても魅力的なことです。我々はPCOとしてイベント開催目的・顧客課題に立ち返り、スムーズにデータを取得できるようにできる企画を提案するとともに、より顧客体験価値向上を図れるコンテンツ作りに尽力してまいります。世の中の変化により柔軟に、スピーディーに対応するためにも、同じ志をもった最適なパートナーとアライアンスすることが肝要です。オンラインとオフラインを併用させ、従来のイベントにしっかりとデジタルを融合し、顧客価値の最大化をより高度に実現できるよう協調していきましょう。「感動」と「共感」を共にすることで、共にお客様の伴走パートナーになれたら良いですね。

JCD EVENTHUB対談

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