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社会課題起点の発想法を身につける アウトサイドインアプローチで、新規事業アイデア創出ワークショップ SDGsセミナーレポート(社員研修)
JTBコミュニケーションデザインは、SDGsに対する取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しており、社会課題の解決に向けた、さまざまなビジネス、取り組みを行っています。
SDGsに関する社内研修も数多く開催しており、SDGsの概念把握や、事業を通じたSDGs貢献など基本的なことについては、社員全体への理解が深まっています。ただ、一方通行の研修では、実務への落とし込みが難しく、具体的な行動に結びつかないという課題がありました。そのため、今年度は実際に学んだ知識をもとに、自社の新規事業アイデアを創出する実践的なワークショップを開催しました。
今回は、本研修のレポートをお届けします。
【セミナー概要】
社会課題起点で新規事業を生み出すってどういうこと?ゲームで体験し、自社ビジネスでディスカッション
高度成長期は、良いものを作れば売れるという「プロダクトアウト」の考え方が主流でした。その後、企業が作れるものだけを作っても売れない時代になると、顧客のニーズをくみ取った製品開発が求められるようになります。これが「マーケットイン」の考え方です。
さまざまな社会課題、環境問題が複雑に絡み合う現在は、プロダクトアウトでもマーケットインでもない新しいアプローチとして、「アウトサイドイン」の考え方が注目されています。
本研修では、前半はカードゲームを使ってアウトサイドインアプローチのビジネス創出を体験し、後半はアウトサイドインアプローチで自社の新規事業を生み出すワークショップを行いました。
【カリキュラム】
第1部:SDGsアウトサイドイン・カードゲーム(110分)
第2部:新規事業アイデア創出ワークショップ(120分)
世界が直面している49種類の課題を、「企業の強み×ソリューション=新規事業」で解決
アウトサイドイン・カードゲームには、2つのゴールがあります。
【ゴール1】:社会課題を解決する新規事業を創出すること(新規事業創出の数を競う)
【ゴール2】:生み出した新規事業にプロモーションをかけて、売り上げを上げること(資金の増加を競う)
ゲームに出てくる「社会課題起点で生まれた新規事業」は、すべて実社会で既に生み出されている事業ばかり。カードとはいえ、かなりリアリティがあり、カードを読み込むだけでも、たくさんの事例を知ることができるというゲームの作りになっています。
1)新規事業創出
ゲームのルールはシンプルです。社会課題カードを読み込み、その社会課題を解決する新規事業を作り出すだけです。新規事業創出に必要なのは、2枚のカード。さまざまな企業がもつ強みをあらわすカード(アセットカード)と、さまざまな企業がもつソリューション(ソリューションカード)。この2枚の組み合わせで、新規事業を考えます。
社会課題は「プラスチックでの海洋汚染」「女性差別と教育・経済格差」「化石燃料と環境汚染」「途上国の子どもの感染症」「難民の就業問題」など身近な課題からグローバルな課題まで、さまざまです。参加者は、「この社会課題を解決するには、どんな技術やノウハウが必要だろう? 解決できるソリューションはないか? 背景にはどんな問題があるのか?」などと考え、チームで議論し、時には他のチームとのパートナーシップで課題解決に向かいます。
2)プロモーション
新規事業は創出しただけでは、企業に利益をもたらしません。また、広まらなければ、社会課題解決にもつながりません。そこで、次に必要なのがプロモーションになります。
「政府の支援」「メディアへの露出」「専門コミュニティの創造/活用」「SNSの活用」など、さまざまな施策を行って、プロモーションを仕掛け、売り上を上げていくことが大事です。生み出された新規事業によって、どのプロモーションが効果的かが異なるので、効果的なプロモーションだけに費用を投じる必要があります。事業の特徴を考えて、最適なプロモーションを行うと、最大27億円の利益をもたらしますが、失敗すると、最大3億円の赤字となってしまいます。
このゲームの醍醐味は、いかに他社とのパートナーシップを組めるかという点にもあります。多くの社会課題を解決するためには、自社の強みやソリューションだけでは不可能なことが多く、他社のもつ強みやソリューションとどのようにコラボレーションできるかという想像力やコミュニケーション力も問われます。プロモーションも同様で、他社と協力して行ったプロモーションの方が、効果的なケースも多いのです。
JCDでは、2日間とも、多くの共創が生まれ、さまざまな社会課題を解決する新規事業を生み出すことができました。プロモーションの実務経験のある社員がいたこともあり、最大59億円の利益をあげるチームもありました(1日目)
自社独自の新規事業アイデアが続々誕生!?
アウトサイドイン・カードゲームを体験したことによって、社会課題起点の発想法を身につけた後は、第2部としてリアル社会の課題解決に挑みました。JCDの強み、知見、ノウハウ、ソリューションを使うと、どんな社会課題が解決できるのか、その先にある新規事業として、どんなアイデアが生まれるのか・・・不安と期待を抱え、後半戦のワークショップに進みます。
ワークショップの前には、「JCDが取り組むマテリアリティ(重点課題)」について、コーポレートソリューション部事業管理局長(当時)の山口孝昭による説明がありました。
▼JCDのサステナビリティページ
https://www.jtbcom.co.jp/company/sustainability/
参加者全員、前半のカードゲームの興奮を一度リセットして、現実社会での社会課題解決へと気持ちを切り替えることができました。
1)新規事業アイデア創出ワークショップ
本ワークショップでは、アイデア創出手法のひとつである「強制発想マトリクス」の手法を使います。
【縦軸①社会課題】
自社を取り巻く社会課題、各自解決したい社会課題を抽出し、ポストイットに記入。必要に応じて、アウトサイドイン・カードゲームで使った社会課題もピックアップします。
【横軸②リソース】
チームメンバー同士、日ごろ取り組んでいる業務を共有しながら、自社の強み、知見、ノウハウ、ソリューションを抽出して、ポストイットに記入していきます。JCD全体としてもっているノウハウをできるだけ多く抽出できるように、参加者のいない部署についても議論しました。
【③アイデア出し】
縦軸と横軸のぶつかるところに、新規事業アイデアがあります。社会課題を解決するために、自社のどんな知見が役に立つのか、自社のどんなソリューションが使えるのか、組み合わせることによってどんな新規事業が作れるだろうかとディスカッションを重ねていきます。なかには、個人的な知見、ノウハウをプラスして、事業の個性を高めるチームや、他のチームの強みを借りてアイデアを膨らませるなど、さまざまな動きがありました。
2)発表
最後は、各チームの発表の時間です。チームの代表者が3分の発表を行い、他チームからのコメントを受けながら、事業をブラッシュアップしていく時間です。
ひとつの社会課題に対して、たくさんのリソースを組み合わせて発想を膨らませたチームがほとんどでした。発表中や、発表後には、「お~」、「すごいな~」などと歓声が上がるような壮大なプランも生まれました。他チームからの質問によって、事業が徐々に具体化していくチームもあり、何年か後に向けて夢を膨らませる時間にもなったのではないかと思います。
2回の研修を通して、参加者からは次のような感想があがりました。
「より企業目線でのカードゲーム内容だったので、参加しやすかったです。とはいえ、ゲーム内容自体は、かなりよくできているので、想定していた新規事業ではないものが回答としてあった驚きは、かなり新鮮=自身の考え方が、OUTSIDE IN的になってないし、そもそも考え方を【狭くしていた】という気づきがあった」
「自社のリソースの再認識と、新規事業を考える非常に良い機会であった。時間の制約の問題もあるが自身が担当する業務との関連性がより多く出てくると更に効果的だと思う」
「たくさんの、様々なアイデアが出たことが感動でした。キャリア、年齢もさまざまなメンバー同士、チーム内で自由にフラットに意見を出しあい、形にしていくこと、みんな悩みながらも楽しそうに取り組んでいたことが印象的でした」
「多くの局から参加してもらえたので、ゲームやWSを通じて、自然とコミュニケーションも図れて、とてもよかったと思います。会社や部のビジョン浸透、風土改革などにも、同様の手法(ゲームで楽しく!)が使えたらよいなと思いました」
JTBコミュニケーションデザインが描く未来
今回の研修では、社会課題を起点に物事を考える「アウトサイドイン」というアプローチを学び、実際に、アウトサイドインの考え方で、自社の新規事業を考えてみるという体験を行いました。
研修を通して、既存ビジネスだけではなく、「どんな社会課題を解決したいか?そのために使える自社のリソースやソリューション、強みはないか?」と考えることが大事だとわかりました。また時には、他社とのパートナーシップによって、自社だけでは解決できない大きな社会課題を解決することもできるということも再認識できました。
JTBコミュニケーションデザインは、社員全員が自ら考え、行動することによって、持続可能な社会の実現に貢献していく企業です。ボランティアや社会貢献活動ももちろん大事ですが、より大きなインパクトを出すために、企業として「ビジネスの力で社会課題を解決する」ことに挑んでいきたいと考えています。