【アイデア紹介】エンゲージメントを高めるために効果的な企業イベントとは

近年、コロナ禍でオンラインイベントが主流となったこともあり、企業イベントを実施する際の課題として、顧客や従業員とのエンゲージメントを高めたいというご相談をよくいただきます。JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)では、独自のモチベーションメソッドやホスピタリティメソッドにのっとり、エンゲージメントを高めるプログラム設計や演出プランなどを多数手掛け、目的に応じてイベントの開催形式からご提案しています。例えば、大人数に向けた情報発信が目的の場合はシアター形式、資料をもとに書き留めていただきながら事例共有するようなイベントの際にはテーブル付のスクール形式、議論を深めたい研修のような場合はロの字やコの字のアイランド形式を、それぞれ推奨しています。また、顧客向けのイベントにおいて、参加者同士のエンゲージメント向上が目的の場合は、より密なコミュニケーションを図りやすい円卓スタイルやキャバレースタイルという形式をおすすめします。今回はこれらの会場レイアウトやプログラム設計だけではなく、顧客と営業担当者とのエンゲージメントをさらに高めるための施策を行なった実際の事例『JTB Engagement Camp』をご紹介するとともに、その担当者である田井と齋藤が、効果的な取り組みについて語ります。

 

自然とコミュニケーションが発生するような空間設計で顧客のエンゲージメント向上を狙う

田井
今回当社で手掛けたのは、JTBの法人営業を担当している部署が年に一度、法人のお客様を招待し、JTBのソリューションを紹介したり、絆を深めたりするために開催している企業イベントです。お客様とのエンゲージメントを高める際には、カンファレンスなどのプログラム設計も重要なのですが、今回のイベントではそれに加えて、お客様と営業担当が自然とコミュニケーションを取れるような空間設計を採用しました。

齋藤
一般的な顧客向けの企業イベントは、ホテルや貸会議室等のホールでゲストによる基調講演を行い、その後に懇親会で営業担当と招待したお客様がコミュニケーションを取るという流れが多いかと思います。ただ、それだと基調講演だけを見てすぐに帰ってしまう方も少なからずいて、密なコミュニケーションがなかなか取れないという課題があります。今回のイベントでは、お客様ともっと気軽に会話をしながら楽しんでもらえるイベントにしていきたいというJTB側の要望もあり、今までと空間設計を大きく変えることで、エンゲージメントをより高めるイベントにすることを提案しました。そして、お客様にオープンな気持ちで参加してもらいたいという想いからキャンプをテーマに設定し、名称も『JTB Engagement Camp』としました。

田井
このイベントの目的は、お客様との関係構築、JTBグループのソリューションを知ってもらうこと、そしてJTBが行っているサステナブルな取り組みをPRすることの3点です。これらの目的を果たすために、イベント設計のポイントとなったのが自然とコミュニケーションが発生するような仕掛けづくりでした。営業担当が自社のソリューションを紹介する際、場合によってはソリューションの押し売り営業のように感じられてしまうこともあるので、お客様と営業担当とのコミュニケーションが自然と発生するように促進しつつ、ソリューションを紹介しやすくする工夫を施していきました。

非日常を演出した企業イベントは
10回の営業訪問よりも効果的

田井
テーマがキャンプなので、会場の床には人工芝を敷いたり、アウトドアブランドとして人気の高いスノーピークのチェアやテーブル・焚き火台などを配置したりして、キャンプらしい開放的な雰囲気を演出していきました。焚き火台には薪を置き、キャンプの疑似体験をしていただくことで、いつもの企業イベントとは違うリラックスした雰囲気が創出でき、コミュニケーションの促進にもつながりました。また、JTBのソリューションを知ってもらうために多くのブースを回遊できるようにして欲しいというご要望から、メインステージとサブステージの二つのステージを作ってセッションを交互に開催しました。会場のレイアウトもシアター席・焚き火席・立食エリアなどを組み合わせ、自由な雰囲気を創りました。興味がある講演時は前方のシアター席に座ってしっかり話を聞いたり、お客様と営業担当が後方の焚き火席でリラックスしながら聴講したりと、フレキシブルなレイアウト展開にしました。


齋藤
もう一つの目的であったサステナビリティの取り組みに関しては、ケータリングにおいて、不揃いで廃棄されてしまう野菜や保存料などの添加物が入っていない食材を使用し、キャンプを意識したメニュー構成にしました。飲み物も知的障がいのある方が作っているワインや廃棄素材を使用したクラフトジンなど、「サステナブル」にかなりこだわって提供しています。その他、サステナビリティボードを設置してJTBグループの取組みをご紹介したり、飲食のご提供においても「どこがサステナブルな取り組みなのか」ということをパネル等で可視化したりすることで、イベントの中で取り組める内容を皆様に認知していただくことが出来たと思います。

会場のしつらえが普段と違うと印象に残りますし、それが会話のきっかけにもなります。そういう意味で、ケータリングについても話題になるような会場づくりを意識し、JTBのサステナビリティの取り組みをアピールすることができました。


田井
人は何かを体験して感動を得ることで、初めて記憶に残っていきます。例えば、企業の社員旅行で添乗員としてお客様に2・3日同行して、観光や食事など同じ時間を一緒に過ごすだけで、訪問営業を10回するよりも早く関係構築することができるんです。なぜなら、『旅』という非日常感によって、より心を開きやすい状態になっているからです。同じように、こういった非日常を感じられるイベントで会場内をともに自由に回りながら自社について知ってもらうほうが、お客様とのエンゲージメント向上には効果的なのではないかと思います。

今回のイベントでは、自然とそれを演出できるような設計を施し、何かあったらJTBを思い出してもらえるよう参加者の心に働きかけることを意識しました。結果として、お客様にはリラックスした状態で参加してもらえましたし、JTBの紹介しているソリューションやステージセッションなどが非常に興味深かったという評価をいただきました。旅行だけではない、JTBの事業領域の幅広さを伝えることもできたのではないでしょうか。

齋藤
JTBの営業担当からも、「今までのかっちりしたビジネス形式のイベントと違って楽しく参加できた」、「当日お客様とコミュニケーションが十分取れた」との声を聞くことができました。その後のアンケートでも、半数が次のアポイントメントを取れたという結果が出ていて、関係性を構築するという意味でも成功した手応えを感じています。

五感に働きかけ、空間設計にこだわることで

田井
コロナ禍が一旦落ち着いて潮目が変わっている最中ということもあり、今回のイベントはクライアントの関心が高いタイミングで実施できたと思います。顧客ロイヤリティを高め、信頼関係を築いていくような営業手法が重要視されていくのだと、このイベントを通じて改めて実感できました。

齋藤
カンファレンスなどのプログラム設計だけではなく、お客様同士がネットワーキングできたり、五感に働きかけたりする演出は、イベントの効果を最大化するポイントです。最近では、ユニークベニュー(歴史的建造物・神社仏閣・博物館などの会場で、会議・レセプション・イベント等を実施することにより特別感や地域特性を演出すること)も注目を集めていますが、格式ある場所になればなるほど収容人数の制限などの理由でハードルが高くなってしまいます。JCDが手掛ける空間設計であれば、ホールなどの一般的な会場をユニークベニューのようにすることができるんです。
また、大掛かりな空間設計を取り入れることが予算的に難しい場合は、一部を取り入れるだけでも通常の企業イベントとは違う印象を与えることができます。例えば、サステナブルにこだわったケータリングメニューの一部を提供するだけでも、サステナビリティに取り組んでいる企業であることをアピールすることができます。

田井
今後はこのようなアウトドア空間設計イベントをセミパッケージ化して、気軽に使っていただけるようご案内できたらと考えています。そして、ゆくゆくはホールや会議室だけではなく、屋上や庭園など普段とまったく違う空間での開催もご提案していきたいですね。ビジネス系のイベントという枠からはみ出して、いい意味で期待を裏切るような空間設計だと、参加者は会場に入った瞬間にワクワクし、企業に対する興味・関心も高めることができます。そして、次回もこのイベントに参加したいと思ってもらえたら、エンゲージメント向上という目的が達成できると思います。今までのイベント形態にマンネリを感じていたり、お客様とのエンゲージメント向上に課題感を持っていたりする方は、ぜひ私たちにご相談ください。
コーポレートソリューション部 モチベーションイベント局
田井威久
JTBで企業や行政に対しての旅行営業・イベント営業といった法人営業を経験した後、JCDに出向。趣味はキャンプ。家族サービスも兼ねて月に一度は自然の中に身を置いて、気分をリフレッシュ。車にはキャンプ道具がいっぱい。

コーポレートソリューション部 モチベーションイベント局
齋藤昌子
外資系旅行会社での勤務を経て、JCD の前身であるJTBモチベーションズに入社。現在は法人イベントのプロデュース等を担当。趣味は旅行と韓国ドラマ鑑賞。最近は、マイVRで南極大陸などを探検するのにハマり中!

関連事例