まずは、何から取り組めばよいのか 周年事業を成功へ導く、設計のポイントとは

企業の周年事業とは“組織にポジティブな変化”をもたらすもので、企業成長の機会となる重要な節目です。社を挙げて取り組む企業も多く、経営層や周年事業に携わる部署・メンバーなど多くの人と合意形成を図りながら、進めていくプロジェクトです。
「企業(組織)にポジティブな変化をもたらす 周年事業のあり方とは」の記事では、まず周年事業に取り組む必要性を理解することについて紹介しましたが、今回は実際に何から取り組むべきなのか、成功へ導く設計のポイントについて、JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)で周年事業の総合プロデュースに携わる河野が語ります。

ファーストステップは「誰に・何を伝えるか」を明確にすること

周年事業を設計していくにあたってのファーストステップは、目的を定めることです。それを定めるために、まずは周年事業の活動を通じて実現したいことを、過去・現在・未来の時間軸で整理してみましょう。例えば、時間軸が過去であれば、会社の変わらないアイデンティティやカルチャーといった根幹を再認識する。現在であれば、この会社で働く誇りを基にエンゲージメントを向上させる。未来であれば、会社の将来の解像度を高めることで、期待や希望を醸成させるなどがあるかと思います。

この目的を定める際のポイントは2つです。1つ目は「何を伝えるか」だけではなく、「誰に対して」までをセットで考えること。例えば、現在において「エンゲージメントの向上」が実現したいことなのであれば、社員に対してなのか(家族を含めてなのか)、お客様に対してなのか、または取引先に対してなのか。対象を明確にすることで、“何を伝えるか”が、その表現方法含めはっきりとしていきます。2つ目のポイントは、優先順位を決めることです。周年事業は準備期間や工数、予算の観点からもやりたいこと全部ができるとは限りません。時間軸の中で実現したいことを洗い出し、一つ一つを深堀りながら優先順位を決めていきましょう。そうすることで、自社の周年事業にとって何を優先して時間・予算を割くべきなのかが見えてくると思います。



目的が定まった後は、実現に向け、(必要に応じて)経営者インタビューや従業員の意識調査やアンケート、ブランド分析などを行い、自社の現在地を探ります。目的を定めるためにファーストステップで現状分析を行うという考え方もありますが、目的が明確になっていなければ何を調査・分析すればよいのか定めることができません。ですから、目的を定めた後で、(必要に応じて)現状分析することのほうが重要であると考えています。それによって周年事業のコンセプトを具体的にすることができ、連動してスケジュールや予算、どのような施策を行っていくかという手段の策定に入っていくことができると思います。

周年事業は多くの人を巻き込んで進めていく、全社規模で行うイベントなので、いち担当者の独断では決められず、社内の様々なコンセンサスが求められます。それぞれの施策において、目的に基づいた筋道を立てることができれば多くの人の理解・共感を得られやすくなるため、まずは根幹をしっかりと設計することがとても大切になります。そのために、JCDではオリジナルのワークシートや、周年事業施策を2軸図(インナー・アウター/過去→未来)で整理した一覧等を用いて、目的、方向性の設定から伴走させていただいております。

少し一方的なことを話してしまいましたが、周年事業の進め方に正解はありません。手段から入り(例えば全社でサンクスパーティを行いたい等)、逆算から目的を定め、深堀っていくことで、人のこころが動く企画やコンテンツを考えていく。このようなケースにも伴走させていただくことも可能ですのでお気軽にご相談いただければ幸いです。

準備期間をしっかりと取り、社内を巻き込むことで、
「ムーブメント」へつなげる

目的に基づいた周年事業を行うためには、準備期間の確保も重要です。節目となる年から逆算してスケジュールを立てて準備を行いましょう。ポイントは、周年事業の全体部分とそれに連動する各種施策を切り離してスケジューリングすること。全体部分とは、周年事業の根幹設計です。一緒に取り組むパートナー企業の選定や目的設定、現状調査・分析、コンセプト・予算・スケジュール策定等です。これらを経営陣や主幹部署(又はプロジェクトチーム)で行った後、各施策ごとのチームを編成し、それぞれに方向性を検討してもらいます。ここまでで約1~2年の期間を要します。そして、次の1年間で各種施策チームがどんな内容を企画していくのか具体案を検討し、施策の実行に繋げていきます。理想としては、周年イヤーの2~3年ほど前から着手することで、ブレない強い軸をもって周年事業に取り組むことができるでしょう。

補足として、全ての企業が様々な施策を複合的に実施するわけではないと思います。その場合、ひとつの施策の中で役割を分けてチーム化していくことで社内のメンバーを巻き込みやすくなっていくでしょう。



また、このときに重要なのが経営陣をトップとする体制を構築し、できるだけ多くの社員を巻き込んでプロジェクトへの当事者意識を持ってもらうことです。プロジェクトメンバー、そして全社員に周年事業への熱量を伝播させていくことが必要です。そのためにも、プロジェクトチームを編成するにあたっては特定の部署や年齢に偏らず、部署横断、年齢・性別混合で編成しましょう。そうすることで、多くの社員に周年事業への当事者意識を持ってもらいやすくなり、会社全体の一体感にもつながっていきます。弊社では周年事業のアンバサダーとして活躍いただくプロジェクトチームの皆さん向けに動機づけを促すワークショップや企画等もご用意させていただております。



最初にお伝えした通り、周年事業を設計する上で最も重要なことは目的の設定です。目的を曖昧なまま進めてしまうとそれぞれの施策がブレてしまい、最終的に伝えたいことが伝わらない周年事業となってしまう恐れもあります。明確な目的のもと、準備期間に余裕をもち、社内を巻き込みながら周年への熱量を伝播させていくことができれば、きっと企業の事業成長へ“ポジティブな変化”をもたらす周年事業となるはずです。

JCDでは、周年事業を1つの「ゴール」であり、新たな「スタート」でもあると捉えています。当社には各種施策に対する専門家が社内にいるため、経営陣や主幹部署だけではなく、それぞれのプロジェクトチームとも伴走でき、周年事業の目的から全体コンセプトの設計、それらに基づいた施策に対する最適なメンバーをアサインし、コミュニケーションをデザインしていく支援が可能です。その企業にとってベストな答えを一緒にカタチにするため、今後も周年事業を担当される方々の一番の味方となっていきたいと思っています。

周年事業の目的設定やプロジェクトの進め方についてお悩みの方は、お気軽にお問合せください。 JCDオリジナルのワークシートや周年事業施策一覧等を用いて、目的設定から伴走いたします。

河野 一樹|Motoki Kawano
コーポレートソリューション部
モチベーションイベント局
エグゼクティブプロデューサー/
クリエイティブディレクター

お客様の熱量へ寄り添い、カタチにしていくイベント演出を得意とする(空間・舞台進行・コンテンツ・映像・グラフィック等)。企業(組織)と従業員(個)の「こころのつながり」を強くするインナーブランディングのプランニングも行う。

*肩書きはインタビュー(2025年03月)当時のものです。