マンガでたどる周年事業担当者ものがたり 第1話 ~前編~

マンガでたどる周年事業担当者ものがたり
第1話~前編~

食品メーカー勤務の27歳 松田俊介 入社5年目、ついこの前までバリバリの営業マンとして、タイに赴任。「いきなり周年事業担当って…そもそも周年って何すりゃいいんだ?」

周年事業は、会社の創業記念を祝う式典や、社史の編纂、お客様へのお知らせなど、様々な取り組みが含まれます。会社の誕生日を祝う、一大イベント。どんなことをするかは、周年事業の目的によって変わります。例えば、社員の一体感を強めて未来にむかう、という目的であれば、社員全員参加の式典とパーティ等が考えられます。
その一大イベントを任された担当者を待ち受けていたものとは?

※この物語は、実際に周年担当を経験された方へのインタビュー内容に基づいて、編集したものです。
 個人名や業界、場所などの設定は、実際とは異なる名称としています。

研究ちゃん 今日は、私の研究への一人目の協力者として、食品メーカー勤務・27歳の松田俊介さんの体験を振り返っていきたいと思います。
松田 はい、よろしくお願いします。
今はちょうど周年事業担当者の任務を終えて、ほっと一息ついているところです。
研究ちゃん 今回、松田さんには、周年事業を担当している間の「モチベーション曲線」を書いてもらいました。書いてみてどうでしたか?
松田 いやー、改めていろいろあったなと。。。こう振り返ってみると、激動ですね。
研究ちゃん アップダウンを繰り返しましたね。
それでは、図に沿って、詳しく見ていきましょう。
周年ご担当者のモチベーション曲線グラフ「頭まっしろ(周年事業担当者への任命)」「最初の山越え(運営を任せる会社の決定)」「心の壁破り(苦手な人や仕事へのチャレンジ)」「本番直前の嵐(超多忙の中想定外が発生)」「怒涛の本番(達成感と感動)」「周年ロス(心と体が変化に慣れるまで)」「周年振り返り(学びを深める)」

1.「頭まっしろ」期 ~周年事業担当者への任命~


タイに赴任中の松田さんは、ある日突然上司に呼ばれました。

「あー松田くん。うち再来年100周年なんやて。君、担当になるらしいわ。大阪本社に戻って。」「は?100周年?へー、うちの会社そうなんですか。えっ自分っすか?えっ担当?」

驚いているうちに、帰国の日を迎えます。
日本に着いて、大阪本社で着任、そして翌週には東京に出張し、100周年の打合せに参加。「なにがなにやら、頭まっしろ」という状態のまま、仕事を進めることになります。

何もわからない中、手探りで取り掛かり始める松田
研究ちゃん 任命後しばらくは、自分の気持ちの整理もないまま、日々が流れていた感じですか?
松田 ただただ、ついていくのに必死でした。海外赴任していたので、こっちにツテもないし。
まずは知り合いを増やして、と思い、いろいろな人にあいさつしまくり、会いまくりました。
研究ちゃん 「頭まっしろ」状態は、どのくらい続いたんですか?
松田 数か月くらいです。長いですね、我ながら(笑)。
でも、必死にやっているうちに、不思議と、「なんかいけるかも」「やってやろう!」という気持ちになってきました。
「うわ、すごっ!周年ってすごいな。だんだんわかってきたかも。いけるかも
研究ちゃん 何がきっかけで「やってやろう!」と思えたんでしょう?
松田 10年前の90周年の資料をみて、「周年ってそんなに大事なことなのか」と実感しましたね。
あと、何度も打合せとかやってると、仕事の進め方が徐々につかめてきて。
研究ちゃん 「やってやるぞ」という気持ちは、モチベーション(やる気)ですね。
松田さんのモチベーションは、「自分が大事なことに携わっている」という「有意義感」、そして「どうやって進めればいいのかがわかる」という「自己効力感」が高まったことで、生まれてきたと言えます。
松田 あ、確かに。
研究ちゃん 初めて携わる周年事業の仕事は、「頭まっしろ」状態で始める人が多いのですが、松田さんのように必死にやっていると、「有意義感」「自己効力感」が生まれ、「やってやるぞ」というモチベーションが生まれるんですね。

2.「最初の山越え」期 ~運営を任せる会社の決定~

やる気を出し始める松田
研究ちゃん やる気も出てきて、これから軌道に乗ってきそうですね。
その後、なにから始めたんですか?
松田 周年記念式典は、社員1,000人を全員集めることになりました。
その後パーティも開催することになって。
このような大きなイベントになると、社内だけで運営することは難しいと考え、専門業者に依頼することにしました。
研究ちゃん 社内でやりきれない部分は、アウトソースも必要ですよね。
でもそれって、逆に大変なこともありますよね。
自分でやったほうが早いこともあるし。
松田 社内だけで打合せをしている分には、細かい文書がなくても済むのですが、外の会社にお願いするとなると、周年事業の目的や、具体的な方法などを、全部文書にしなければなりませんでした。
打ち合わせや資料作成をする松田。「社長。こういう形で進めたいのですが・・・。」完成した要綱書「いやあ。どういう式典になるか、ようやくイメージができてきましたね。」
研究ちゃん 社内への説明って、結構大変なんですか?
松田 いや、結構大変な作業ですね。
これまでの周年の資料を探し出して、どうやったのかを調べて、関係する部門に意見を聞き、ある程度文書にしたら、社長にも見せ、方向がずれていないかを確認してもらう、とか、もう走り回りましたよ。
研究ちゃん 具体的には、どんな資料ができたんですか?
松田 結局、パワーポイントで30ページくらいの、「100周年式典要綱書」になりました。
でも、これをやることで、自分たちも、「こういうイベントになるんだ」とイメージができました。
ようやくスタート地点に立った、という気持ちでしたね。
いよいよ100周年式典事前説明会当日の会場にて
研究ちゃん 会社の大会議室に、運営会社5社と、社内の関係者を集め、「100周年式典要綱書」に基づいて説明を行ったんですよね。
松田 はい、所要時間は2時間半の長丁場となりました。
これが、実際の式典の1年半前のことです。
研究ちゃん 社外の会社に委託するために、周年の全体像を文書化し、説明を行う。これはいわば、「ものごとを公にする」というプロセスですね。
松田 自分だけ、社内だけではなくて、社外へも公式に表明してしまった!という感じですね。
研究ちゃん こうした外部への表明により、「さあ、言ったからにはやるぞ」という「宣言効果」が生まれ、仕事へのモチベーションが高まると言われています。
松田 「宣言効果」っていうんですね。
研究ちゃん 周年のような一大イベントの場合には、最初の山越えとして、他の部門や他の会社を巻き込んで、仕事を公式のものにし、「こういうふうにやります」と宣言をすることが大切なのかもしれないですね。

3.「心の壁破り」期 ~苦手な人や仕事へのチャレンジ~

オフィスにて「松田君。そろそろ各部門にも参加者のとりまとめを依頼して」「あ、はい…。部門長に作業をお願いするってハードル高いよなぁ。」
研究ちゃん 社内の巻き込みでの大変さもあったようですね。
松田 周年の仕事が進んでくると、社内の様々な部門に協力してもらう必要が出てきます。依頼先の部門長は、僕から見ると「他部門の偉い人」です。
ためらいがあったのですが、ある会議で思い切って言ってみました。
ミーティングにて「このあとは部門長の皆さんから発信してください」「ああ、わかった。では、明日の会議で伝えようかな」「みんな案外気軽に引き受けてくれるんだ」
研究ちゃん 部門長陣に思い切って言った時は、どんな思いでしたか?
松田 偉い人に指示する、って、普通はないじゃないですか。やっぱり怖いですよ。
研究ちゃん 松田さんの会社は、社内の雰囲気はいいのですが、歴史がある分、上下関係もしっかりしていますものね。
松田 でも言ってみたら、案外、快く引き受けてもらえて、怖がらなくてよかったんだと思いました。
隣の席に、自分の上長もいてくれて、いざとなれば援護射撃もしてもらえるという状態だったのもよかったです。
ただ、快諾してくれたのに、(仕事を)眠らせてしまう上長もいて、再度のお願いをしに行ったりもしたんですけどね(笑)」
研究ちゃん 苦手な仕事や苦手な人には、最初の一歩を踏み出しにくいものです。
周年事業を進めるにあたっても、それまで苦手だったことは、自分の心の壁となって立ちはだかりますよね。
松田 心の壁ですか。
研究ちゃん 援護射撃をしてくれる人を確保する等、安全対策をしたのは良かったですね。
こうした成功体験がさらにモチベーションを高め、自分を成長させていけるんですね。

このあと、松田さんはいよいよ式典の本番を迎えます。まだまだ想定外の困難が待ちかまえています。

後半に続く・・・





松田
松田 俊介
食品メーカー勤務・27歳。
入社5年目のタイ赴任中に突然、「周年事業担当」に任命された。帰国後、100周年事業担当として3年間を過ごす。



研究ちゃん
研究ちゃん
日々、企業の中で起こる様々な人間ドラマに興味を持ち、研究を続けている。
ある日出会った会社員が「周年事業担当」として経験した内容に、自分が求めていた「ドラマ」を感じ、周年の世界での研究を始める。
もともと専門とするテーマは、「モチベーション」「組織心理学」。


企画・編集:ワーク・モチベーション研究所