Withコロナ時代の企業イベントを考える①

企業イベントの“いま”と“これから”


経済活動が徐々に戻りつつある今。それでもwithコロナと呼ばれる日常では、対面でのリアルイベント開催は自粛傾向が続いています。このような状況下において、今後企業イベントはどのような変化をしていくのか?長年そのプロデュースに携わってきたJTBコミュニケーションデザインのイベントプロデューサー4名による座談会の開催レポートをお届けします。  

座談会参加者----------------------------------------------------------------------------------------

國原:イベント業界10年以上。金融業界・住宅メーカー・美容メーカー・服飾メーカー・外食系企業・通信系企業・システム系企   業・飲料メーカー等、様々な業界の企業ニーズに合わせた多彩なイベントを担当。  

羽太:通信、保険、金融、美容メーカー、アパレル等々、様々な業界を担当し、最適なサービスを提供。  

武田:企業の経営課題のひとつである「コミュニケーション課題」をイベント施策を通じて解決するプランニングを得意としている。おもしろ企画担当として、クライアントの課題をユニークな切り口で解決をはかっている。  

河野(ファシリテーター):企業がステークホルダーに向けて実施する「表彰式」「キックオフ」「周年」などのイベントを人材・ 金融・医薬・自動車関連業界を中心にプロデュース。イベントを基軸としながらも、その枠だけに捉われず、総合的なコミュニケーション施策を提供している。  

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企業イベント のいま

イベントプロデュース

河野
2020年度、企業イベントはどう変わってきているのか?お二人が担当しているプロジェクト、現在相談を頂いている内容を教えてください。  

國原
新型コロナの影響で多くの企業様はリアルなイベントを避けるようになりました。2020年3月から6月までの開催予定イベントはほぼ中止か延期。3月のイベントは今秋に延期予定になっていますが、今の状況だと秋も厳しいのかなと思います。リアルで行っていたイベントをオンラインイベントに変更して、人が密集しない方法を模索しているお客様がほとんどですね。業界・業種を問わず同様の傾向です。  

羽太
4月から8月までに開催を予定していたお客様に関してはほぼ中止の判断をされています。それ以降に開催予定だったお客様は延期を検討されているという感じです。9月に周年式典をする予定だったエンターテインメント業界の企業様は、中止にはせず延期にしたいけど、「いつであれば、計画した通りの開催ができるか」という目処が立たないので、一旦は中止の判断をせざるを得ないと言われていました。  

河野
ちなみに何月までリアルイベントが中止や延期になっていますか?  

羽太
年内に予定されていたお客様は、延期または中止の判断をされています。2021年1月以降に開催予定のものは、中止/延期の判断はまだ下っていないです。  

國原
自分が携わっているプロジェクトは、2021年の1月までのものが中止となりました。  

河野
1月まで中止!?  

國原
はい。もちろん、オンデマンド配信もしくはライブ配信というのは考えていらっしゃいますが、リアルイベントに関しては1月のものまで中止ですね。2022年まで延期するというところもあります。  

河野
僕の状況でいくと、上期までは延期、下期以降は2ヶ月前の状況をみて、リアルなのかオンラインなのか、あるいは別の施策にするのかを検討されている感じですね。2021年以降に関してはリアル開催をギリギリまで検討したいと考えてらっしゃるお客様もいらっしゃいます。中止に至る判断基準はどういうものがありましたか?  

國原
「リアルで集まれないから」「他の企業も中止にしているから」というのが多いです。オンラインでの実施を考えないわけではないけれども、とりあえず中止にしようと。夏以降に実施を予定していたイベントについてはオンラインへの切り替えを検討されているっていう感じです。  

羽太
ご参加者の中に海外から日本に来られる方がいると判断はすごく早く、すぐに中止のご連絡をいただきました。チャネル向け(販売店様・代理店様向け)販売表彰・インセンティブイベントがありますが、社外の人を全国から一箇所に集めるというリスクを考えて中止にされています。ご担当者の方は、1年間の成果を称える表彰イベントができないため、感謝をどのようにご参加予定の皆さまへ示すか大変ご苦労されています。  

河野
僕の場合は4月以降に予定されていたリアルイベントは中止でも延期でもなく、他の施策で代替するといったことのほうが多いです。人材業界を中心に担当させていただいていますが、リアルイベントの代わりに何らかの制作ツールでメッセージや想いを伝えようとしているのが、2020年度前半の動きです。業界によってイベント実施を検討する判断基準が異なる気はしますね。  

國原
そうですね。デシジョンメーカーまでの距離が近い企業は切り替えが早くできると思っています。「リアル開催ができないのであれば制作物にしよう」みたいな。ただ、日本の多くの企業は同業界の様子も見るし、決裁者までの距離も遠いから、検討するのに時間がかかる。そういう意味で、「十分な検討期間が設けられないなら、中止するほうがよい」っていう考えが多いのかなと感じています。  


いま、お客様が抱えるインナーコミュニケーション課題

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河野
お客様がもっている課題感について、感じることがあれば教えてください。  

國原
そうですね…この新型コロナの影響で経営状況が2極化しているように感じます。コロナバブルで業績が好調な企業がある一方、悪化している企業がある。好調な企業に関しては業務量や従業員の数もが急増したことで、「徐々に疲弊してきている」と言われています。対して、一時的に業績が悪化した会社の従業員は、当たり前ですけれど、「この会社にいていいのか?」「この先が見えない」と不安を感じているわけです。  

河野
加えて、時差出勤・在宅勤務など、オフィスにいる時間も急激に減ってコミュニケーションも不足しがちになりましたよね。  

國原
売上が上がっている企業は、急激に増えた従業員に企業理念やビジョンを共有することが満足にできず、売上が下がっている企業は、不安を感じている従業員に対してのメッセージが伝えきれないという課題を抱えています。また、コロナ禍によってサービスの提供方法や運営方針にも変更が迫られていると思うのですが、それを従業員に伝えなければいけない、という課題もありますよね。「こういう方針でいく」と。しかし、今までのようなコミュニケーションが取れなくなっているので、どう伝えたらいいのかをお困りではないかと考えています。  

羽太
まさしくそうですね。私が担当させて頂いている小売業界のお客様で全国に1000店舗以上持っている企業があるのですが、今までは店舗でのサービス提供が主だったのを、これからは持ち帰りやドライブスルーに力を入れていこうとしています。そのことを「どのタイミングで従業員に伝えるのか?」「どうやって伝えるのか?」といったところで悩まれていますね。  

河野
業績がよくなった会社と業績が悪くなった会社、両社置かれている状況は違いながら、コロナ禍によって変わった世の中の価値観を踏まえ、“どういうメッセージを、どのタイミングで、どのように伝えていくのか?”という悩みを持っているということですか?  

國原
はい、今までと同じようなコミュニケーションができないのですが、じゃあ、今までと同じようなコミュニケーションの量と質をどう確保していくかということについて悩まれているのかなと。  

羽太
店舗運営型の企業でいうと、店舗の休業が続いているので社員の方たちも不安になると思います。通常であれば全社総会でメッセージを伝えたいところだけれども、そもそも集まることが難しいし、何かメッセージを伝えるということが会社としてしづらくなっている。その中で「なんとかしなきゃいけないよね、本当は一同に集めてメッセージを送りたいけど、それに代わる何かをしなくちゃ」と悩んでいるのかなと。  

河野
メッセージは発信したいけど、その最適な手段がわからないという……。  

國原
分からないというか「自社にあった、社風にあった伝え方って何だろう?」「リアルじゃないとしたら何だろう?」という、試行錯誤をしているのだと思います。  

羽太
その新しい形というものを今、求められているわけで。それは私たちから提示していかないといけないですよね。  

國原
コロナ禍でいろんな企業がいろんな課題を持っていますけど、物理的な距離が生じたことで、改めて「やっぱりコミュニケーションは大事」ってことが再認識されたと思います。よく「コロナによってリアルがデジタルに取って代わられる」と言われますが、そうではなく、無駄なリアルが省かれて本当に大事なリアルだけが残るのだと思っています。何が無駄で何が必要か、その辺がコロナ禍によって明らかになってきたのかなと感じています。  

With コロナ 企業イベントの考え方

event producers 1


國原
リアルなコミュニケーションの必要性は、多くの企業が改めて認識しつつ、同時に「リアルじゃなくても良い部分」も顕著になったのかなと思います。ですので、オンラインはオンラインで求められながら、リアルの在り方というものがより尖って磨かれていくのだろうなと思います。  

羽太
リアルイベントを軸に企業のインナーコミュニケーションをサポートしてきたので、國原さんの言葉通り、本当に大切なリアルに拘って、企業の組織課題に向き合っていきたいです。個人的感覚な話になってしまいますが、リアルは五感で捉える情報量がオンラインとは圧倒的に違うと思っています。価値観の共有・体感を通じて共感が生まれた時に行動へつながる心の変化が起こるので、それを促す仕掛けとしてリアルに勝るものはなく、こういう状況下だからこそ、避けるのではなくソーシャルディスタンスを踏まえたリアルでの開催方法、あるいはオンラインを掛け合わせたハイブリットを検討するべきだと考えています。  

河野
ハイブリッドは今後リアルの当たり前が戻ってきた時も持続的な考えですよね。リアル参加が可能な人という物理的且つ経済的な基準のみを設けるのではなく、これまではリアルでは参加しづらかった人達もオンラインで繋ぐなど設計の視点を変えることでインナーコミュニケーションの量も質も変化していきますね。  

羽太
コロナ禍で物理的な接触が制限されているから飲み会などのプライベートシーン含めオンラインが中心となっていますが、人が生きる上での心の豊かさはこれだけでは満たされないとも思っています。自分の人生とって大切なヒト・コト・モノであればあるほど目には見えない五感で捉える情報量で心を通わせているのかなと感じています。  

河野
コミュニケーションの深さを求めるものはリアルで、合理性を求めるものはオンライン(デジタル)という考えですか?  

羽太
そうですね。全てその基準の中でコミュニケーションを作っていくわけではないですが、その考えをベースに状況合わせて柔軟に組み合わせていくことがポイントです。私たちはリアルの強み(価値)を追求していますが、オンライン(デジタル)の強みも大いにあると感じています。例えば、参加性や双方向性の作りやすさ、最新技術を駆使した先進性の表現、情報をコンパクトにすることでの伝わりやすさなどです。これはリアルを当たり前に考えていると気がつきにくい視点でもあり、リアルでやっていたことをオンライン(デジタル)で実現するのではなく、全く別物として考え、組み合わせていくことが重要だと思っています。  

國原
我々のやっている“企業のメッセージを社員へ伝える”ためのコミュニケーションというのも、企業・社員双方にとって非常に重要なことですから、リアル・オンライン(デジタル)それぞれの強みを組み合わせた施策を模索していく必要がありますね。  

河野
そうですね。リアルとデジタルが共存するこれからは、安易に世論に引っ張れることなく、行動につながる心の変化を促すにはどの手段が最適かを、それぞれの特性を踏まえて設計していくことがポイントだということですね。
 

コロナ禍で開催したオンライン表彰式

河野
最後に、このコロナ禍で実際に行ったオンラインイベントの事例について、武田さんに紹介していただこうと思います。武田さん、よろしくお願いします。

武田
はい。デジタル広告を扱っている企業様の事例となります。  

こちらの企業様は毎年4月に社員を一同に集めて、事業方針を伝える戦略説明会と社内コミュニケーションとしてのアワードを組み合わせたイベントを開催しています。イベントに対する評価も高く、1年の中でその日を楽しみにしてくれていたり、そこでのコミュニケーションを取ることの素晴らしさを実感した、というお声も数多く頂戴していました。 結果として、アワードで表彰されることを目指す文化が、ここ何年かで根付いてきています。この“アワードを目指す”というところで、社員のモチベーションが上がり、企業の業績にも反映されています。ですから、コロナ禍ではあっても「このアワードは絶対にやらなくてはいけない」というのが、経営側の考えでした。  

事業方針の発信については、コロナ禍に対応するためにもタイムリーに行う必要があったので、基本的にテキストで社内に通達・共有していました。でも、アワードっていうのはそういうのとは違うわけです。 アワードの受賞者がどうやって決まるかというと、社内のプロジェクトにノミネートされた人たちが全体でプレゼンテーション大会をして、そのプレゼンテーション大会の模様を映像でアップします。この映像が、何十プロジェクト分あるのですが、全社員が見て、自分が良いと思ったものに投票するという形になっていて、今年もそれはちゃんとやっています。 なので、実際に人が集まるリアルイベントはできないけれども、アワード自体がなくなるというのはあり得ない、ということで、リアルイベントの代替としてオンラインのイベントをやろうと。  

オンラインイベントの制作から実施まで

イベントプロデュース

武田
まず、配信プラットフォームを何にするかを検討していきました。加えて、それだけではできない双方向のコミュニケーションをどう実現するか、といったところも含めてミーティングを複数回行い、さらには複数の配信システムの検証もやりました。 リアルイベント同様にオンラインでも進行台本をしっかり作り「受賞者は挙手をしてコメントできる準備をしていください」というアナウンスを進行の中に入れます。それで全国にいる受賞者の方々をプレゼンターの役員が当日発表していくのですが、名前が発表されると同時に配信画面に招いて、受賞コメントを話してもらうという流れにしました。  

「双方向のコミュニケーション」というところでいくと、視聴者がチャットでコメントできるようにもしました。 これにより、ただ見ているだけでなく、「おめでとう」といった、コメントをいれてリアクションできるようにしました。 また、全体で二時間ぐらいのプログラムだったのですが、ただ二時間を司会1人が話すのを見ていても面白味がないので特別感は作れない。これまで散々尖ったイベントをやってきたのに、それがオンラインになった途端に「イマイチだな」みたいな感じにはしたくなかったので、今をときめく芸人コンビにゲストMCとして入ってもらい、社長を含めて3人で掛け合いしながら進めてもらうようにしました。  

MCには参加者からのコメントも適宜拾ってもらっていたので、視聴者の参加感も高まったのではないかと思います。結果的に二時間の放映で、「○○さん、おめでとう!」とか「めっちゃ努力してたもんね!」とか1800くらいのチャットコメントが集まりました。 アワード終了後にはグループごとにリモート飲み会ができるような部屋を作っていて、各人が好きな部屋を回遊しながらコミュニケーションできるようにもしていました。この時は企画しませんでしたが、今後、例えば芸人さんと飲める部屋なんていうのを作るのもコンテンツとしては面白いかもしれませんね。  

880人が視聴し、双方向でコミュニケーションを取れるイベントとなりましたが、オンラインをいかにリアルに近づけていくかという一つのチャレンジ事例になったのではないかと思います。  

イベントプロデュース

河野
オンラインイベントでもリアルに劣らない様々な可能性を企画できそうですね。対談の中でも出てきましたが、今できることのみを優先的に考えていくのではなく、何を目的にインナーコミュニケーション施策を実施するのか、そのための選択をリアル・オンライン(デジタル)の特性を踏まえて設計していくことが重要だということを改めて気が付くことができました。次回は「周年事業」についての対談をお届けしたいと思います。本日は皆さんありがとうございました。