まずは、何から取り組めばよいのか 周年事業を成功へ導く、設計のポイントとは
企業(組織)に“ポジティブな変化”をもたらす周年事業のあり方とは
周年事業とは、変わらない「アイデンティティ」を再確認。「ありたい姿や実現したい社会」を創造。これまでとこれからを踏まえ「今を見つめ直す」。とても重要な時間です。しかし、5年、10年に一度といったタイミングで行う事業のため、初めて携わる担当者も多く、何から始め、どのように設計にしたらよいのか?悩まれることもあるのではないでしょうか。
そんな方々が迷うことのないよう、周年事業へ取り組む「理由」・「その役割」から「設計フレーム」について、長年企業のインナー向けイベントをデザインしてきたJTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)の河野が語ります。
企業(組織)が持続的に成長していくために
周年事業において、イベントを中心に様々な施策を複合的に展開することが一般的になってきたのは、ここ10~15年からでしょうか。その前は打ち上げ花火的に楽しいイベントが開催できればよい、という風潮が多かったように思います。しかし、今は自社課題に対する目的を設定した上で、周年事業の施策を通じて企業や従業員(又はステークホルダー)に、どのような“ポジティブ変化”をもたらすかという観点で取り組まれている企業が多くなっていると感じています。
なぜ周年事業に取り組む必要があるのか
当然ですが、社会は常に進化(変化)していますので企業は持続的な成長を遂げなければ生き残っていけません。そのためには企業が“何のために存在するのか”という「存在意義」と、自社の商品やサービスがもたらす「提供価値」が社会から選ばれ続ける必要があると思っています。
また、社会という側面だけではなく、従業員との関係性も重要です。今は企業(組織)と従業員がフラットにある時代となってきていますので、企業(組織)が持つ価値観へ、従業員の共感度を深めていく必要があります。「存在意義」や「ビジョン」に基づいた自分達の「行動」や「提供価値」が社会に貢献できているという実感を得ることができなければ、その企業で働く意義を見出だせず、人材流出に発展していく可能性すらあります。
つまり企業が目指す姿とは、社会と従業員から「存在意義」や「提供価値」が共感され、選ばれ続けることだと考えています。そして、この「価値評価」こそが企業としての利益につながり、成長が成し遂げられていくのです。言葉にすると当たり前のことなのですが、周年事業において、これらはあまり考えられていない要素だと私は感じています。単なる祝祭と捉えるのではなく、企業が持続的に成長し続けていくために「重要な役割を担う」ものであると理解することで、取り組む姿勢も変わってくるのではないでしょうか。

事業成長における周年事業の役割
以下の図は、事業成長における周年事業の役割をPMVV起点で整理したものです。PMVVとはパーパス・ミッション・ビジョン・バリューの略です。パーパスとは企業が何のために存在するのかを表した言葉で、戦略判断の拠り所になる概念とされています。また、ビジョンは企業やブランドがなりたい姿、または実現したい世界・未来・状態を表しています。根底にあるパーパスをベースに、ビジョンへ向かって未来に進んでいくことが企業の事業成長のあり方と言えます。

そして、パーパスとビジョンを実現するために果たすべきことがミッションであり、そのミッションに対してどういう価値観を大切にして行動するのかを表すものがバリューです。それらが企業のカルチャーを生み出し、従業員のアクションを動機づけています。このアクションこそが、企業の「存在意義」や「提供価値」を社会が実感・評価すること、そしてコーポレートブランディングにも繋がっていきます。
企業のサービスや商品を社会に対して提供しているのは従業員です。ですから、従業員のアクションがなくては社会の実感・評価にも繋がっていきません。企業の成長も成し遂げられないということです。周年事業は、過去・現在・未来の時間軸で、今を見つめ直すことで事業成長に繋がる変化を従業員に動機づけるにはとても効果的な施策であると考えています。

変わらないものと、変えていくもの
周年事業に取り組む理由を一言にすると、「企業(組織)にポジティブな変化をもたらすため」だと考えています。 常に変化する社会においても、自分たちが「これまで何を大事にしてきたのか」というアイデンティティは忘れてはなりません。今の価値観に合わせて表現をアップデートしていく必要はありますが、根底にある「こうありたい」といった概念は不変的なものです。変わらない「アイデンティティ」を再確認。「ありたい姿や実現したい社会」を創造。これまでとこれからを踏まえ「今を見つめ直す」。過去・現在・未来の時間軸で捉え、企業(組織)をひとつの大きなベクトルにする“ポジティブな変化”をもたらすことができれば、従業員のアクション、そして企業の成長に繋がっていくはずだと私は信じています。

周年事業は、企業(組織)の持続的な成長に繋がる変化を動機づける重要な機会ですが、本当の意義を理解して取り組んでいる企業はまだまだ多くはありません。まずはスタートさせる前の準備として担当者が周年事業の本質を理解し、会社を前進させるために、なぜ取り組む必要があるのか、その意義や役割についてしっかりと認識することが重要です。そうすれば、自分たちが目指すべく周年事業のイメージがしやすくなりますし、経営層や従業員への理解・共感も得られやすくなり、プロジェクトの円滑な推進、ムーブメントにも発展していきます。
繰り返しにはなりますが、周年事業は企業(組織)に対して“ポジティブな変化”をもたらすことができ、成長促進に繋げることができる絶好の機会です。ぜひ周年という特別な節目を、成長戦略の一環と捉えて取り組んでいきましょう。
後編では、周年事業デザインにおいて、何から取り組むべきなのか、成功する設計のポイントについて解説しております。こちらも合わせて、是非ご覧ください。
河野 一樹|Motoki Kawano
コーポレートソリューション部
モチベーションイベント局
エグゼクティブプロデューサー/
クリエイティブディレクター
お客様の熱量へ寄り添い、カタチにしていくイベント演出を得意とする(空間・舞台進行・コンテンツ・映像・グラフィック等)。企業(組織)と従業員(個)の「こころのつながり」を強くするインナーブランディングのプランニングも行う。

*肩書きはインタビュー(2025年03月)当時のものです。