MICEサステナビリティ:環境に配慮した持続可能なイベント事例:SDGsの取り組み

サステナビリティ


会議やイベントの企画・運営を手がけるJTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、主催者である企業・団体のSDGsの達成に向けた取り組みへの支援を行っております。「経済的」「文化社会的」「環境的」視点において、専門的な知識を有するスタッフが様々な企画や運営をサポートすることで、企業・団体の担当者様とともにMICE サステナビリティを推進しています。

JCDで担当した、持続可能な会議・イベント開催における具体的な取り組み事例を対談形式にて紹介します。

事例:持続可能な東京研修:SDGsの取り組み

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イベント会場:グランドニッコー東京 台場  営業部 池田 晋 氏
担当者:ミーティング&コンベンション事業部 モチベーションイベント局 齋藤 昌子
聞き手:ミーティング&コンベンション事業部 マーケティング局 石毛 照栄
               Sustainable Event Professional Certificate (SEPC) 取得 Issued by Events Industry Council

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持続可能な研修実施の目的と受諾内容とは


石毛/
私は前職のインバウンド専門旅行会社で、サステナブル・ツーリズム国際認証取得に向けてサステナビリティ・コーディネーターをしていました。そのためSDGsやサステナビリティ(持続可能性)に関心が強く、実は個人的に、2019年、海外非営利団体主催による地球温暖化という問題に対して、解決策を創出し行動を起こすリーダー向け東京研修に参加していました。この研修をJCDの齋藤さんが運営していたというのは、当時全く知りませんでした。確か、参加人数は800名を越しており、大盛況でしたね。改めて、この東京研修の目的と内容について教えてください。


齋藤/
石毛さんが参加いただいた東京研修は、海外非営利団体が主催で2日間にわたり実施しました。気候変動により進む「地球温暖化」という世界的な問題において、日本が直面している環境危機の把握、そしてその環境危機を防ぎ、「地球を守る為の行動」へのアクションを起こしてもらうための研修でした。また、研修を通じて活動活発化してもらうため参加者間交流も目的の1つでした。

研修自体はアメリカのイベント会社が運営を請け負っており、JCDは日本開催にあたり、そのイベント会社よりイベント運営・制作を直接受託。その際、運営・制作においては「SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を」に取り組むよう要望をいただきました。海外主催団体はSDGsの取り組みに積極的なアメリカ市場をベースにしているため、さまざまな要望をいただきましたが、今回の開催地は日本ということもあり、日本市場目線でその要望に応えるべく、運営・制作について具体的な提案をしました。

池田氏/飲料を含む会場手配は、当ホテルが直接、海外主催団体より受諾しました。その際に、気候変動の対策をするようにと以下のご要望をいただきました。

  • ・ごみを減らすこと・分別をしっかり対応すること
  • ・食事のメニューは肉・魚を一切使用せず、すべてベジタリアンメニューにて対応すること

・イベント終了後ごみの総量を計測すること

グランドニッコー東京 台場 池田 氏 (オンライン対談)

持続可能性(サステナビリティ)/SDGsの取り組みについての依頼内容と具体的な提案とは


石毛/
研修受付はオンラインでペーパーレス、また、会場では17SDGsのアイコン(ロゴ)が張られたごみ箱や、フードマイル削減が記載された料理メニューカードを見かけました。具体的には、サステナブルに対応した提案はどのようなものでしたか。

 

3R:リデュース、リユース、リサイクルの徹底と省エネ


齋藤/
ステージ装飾関係、受付関係、廃棄物関係では、以下の取り組みを提案して実施しました。
・スクリーン:再利用可能なドレープ(布製)を採用。

  • ・持ち込む照明:LED電球照明のみ。
    • ・ブランディングバナー・サインなど:日本でも英語が通じることもあり、アメリカのイベント会社が過去利用した英語バナー、ポディウムの枠やブランドロゴ(サイン)などを持ち込んでもらい、なるべく既存のものをリユース。
    • ・ネームタグパッケージ(名札):最終的にコンポスト化(*)できる、アメリカ製の植物性プラスチック素材を採用
    • (*)微生物などにより発酵させ、たい肥化し、再利用すること
    • ・ごみ分別:海外主催団体のガイドラインに則り、可燃ごみ、食べ残し、リサイクル紙、その他リサイクル(ペットボトル、ビン、カン)の4種類にごみ箱を分け、会場と導線に8セットを設置。


      4種類に分別したごみ箱

    • ・登録と受付:すべてオンラインにすることでペーパーレスに。参加者へ事前にQRコードを送付して、当日の受付をスムースに実施。

    • 実は、裏方である私たちの食事についても通常はお弁当ですが、お弁当容器がどうしても「使い捨て=ごみ」となってしまうことから、ビュッフェ形式にしました。

      また、参加者同士で研修以降の関係性を持続してもらうため、テーブルアサイン(座席指定)は、参加者の居住エリア、職業など共通点を見出し、グループ分けをするなど配慮しています。

      池田氏当ホテルでは以下の具体的な取り組みを提案して実施しました。

    • ・飲み物はバルク提供により不要なパッケージを削減。コーヒーは、フェアトレードのコーヒー豆を取り寄せて提供しました。
    • ・グラスとカップ&ソーサー、カラトリーはすべて繰り返し使える既存のものを提供。
    • ・ごみとなる紙ナプキン・個別包装のコーヒーミルク・砂糖などは使用致しませんでした。
    • ・ベジタリアンメニューには、地元野菜(食材)を優先的に使用することで、地域の経済を支援。オーガニック野菜も取り入れヘルシーな料理でありつつも、野菜だけの使用のため、参加者にご満足いただけるよう、料理方法などを工夫し、メニューを提案。


    • 飲料および料理提供の様子

  • ・日本人以外の参加者や、宗教・食の制限がある方にも安心して料理を楽しんでもらうため、日・英による料理メニューカードに主な食材を明記。
  • ・地元の食材を積極的に使用することで、フードマイル削減に貢献し、結果、食料輸送によるCO2削減に貢献。
  • ・分別されたごみの廃棄物処理については、海外主催団体への報告のため、分別された状態のままの移動に気を付け、その状態のままの重さ(Kg)を計測後、ごみ処理回収業者へ処理をお願いしました。


  • 料理メニューカードには、主な食材の日英表示、地球温暖化防止対策についても記載
     

    持続可能性(サステナビリティ)/SDGsの取り組みにあたり、日本市場での課題と対策とは


    石毛
    参加者の目に見えないところや、裏方のスタッフに対してもいろいろな取り組みをなさっていたのですね。前途の取り組みは、SDGs達成に向けて海外では当たり前になってきていると思います。しかし、どちらかというとSDGsの取り組みに対して遅れをとっている日本では、さまざまな課題があったのではないですか。

     

    齋藤ごみ分別については、海外と日本とではごみの焼却やリサイクル基準が異なります。もっと追及すると、日本では区によっても基準が異なります。そこで、該当する区で実際できることを、海外主催団体とアメリカのサステナビリティコンサルティング会社へ相談しながら、日本と海外、両方の目線で分別の定義付けを行いました。

    イベント機材は主にレンタルなのですでにリユースしていますが、購入が必要な備品の調達では少し苦労しました。例えば、コンポストできるネームタグパッケージ(名札)は、日本でも入手できるのですが、アメリカと比較してかなり値段が高く、輸送によるCO2削減も兼ねてアメリカから来日するイベント会社に持参してもらいました。日本でもサステナビリティ/SDGsの取り組みに対する需要が高まれば、生産量が増えて、値段が少しでも安くなってくれるのではと期待しています。また、このネームタグはコンポスト化できるにも関わらず、その受け入れ先が日本で見つからなかったため、最終的にコンポスト化できなかった課題が残りました。

     

    池田氏/いままでも一部のメニューに対してベジタリアン・ビーガンメニューのご要望には対応していますが、参加者800名分全員がベジタリアン・ビーガンメニューというのは、私の経験上でも初めでした。野菜という食材のみを使用するため、味・見た目・調理方法を工夫しなければ参加者にご満足いただけないので、調理部門と何度も打ち合わせを行い、メニューを作り上げました。

    大量の食材調達においてはホテルとして通常問題はないのですが、地元食材やオーガニックのように調達量が十分でない食材だけに頼ると天候に左右されることもあり、大量ケータリングには対応ができません。この点におきましては仕入契約先を多く持つことがポイントと考えております。

    ごみのリサイクル・廃棄物処理については、アメリカのコンサルティング会社より指定された4つの分別のままでは、日本のごみリサイクル・廃棄物処理業者は回収してくれません。そのため、4つに分別されたごみをさらにリサイクルと廃棄物に細分化する作業は、スタッフが手作業で行う必要がありました。また、初めての試みであったごみの計測は、専用の計測機材がないので、細分化されたごみをスタッフが持って体重計に乗り、実際のごみの量を計測しました。ホテルスタッフの地球温暖化対策への理解と協力が得られたおかげで、海外主催団体のご要望に叶う対応をすることができました。

    一方で、今回の研修で使用される電気については、例えば、再生可能エネルギーへの転換だと電力会社との手続きが必要となりますし、カーボン・オフセット/ニュートラルする場合は第三者へCO2排出量の計算とオフセットを委託する必要があるなど、ホテルとしてすぐに対応をすることができません。同様に、節電計画書などの作成も、社として取り組む必要があるため、今回の研修ではエネルギー計算及び節電計画書の作成については対応しませんでした。

    SDGsの取り組みは、難しく考えると何から手をつけて良いかが分からなくなってしまうので、ごみを減らす・無駄をなくすといったような「取り組みやすいこと」を全員で取り組んでいくことが重要と考えており、スタッフ一人一人の小さな力が結果として社会全体への寄与するのではないでしょうか。

     

    石毛今回の研修でも、多くの人やモノが移動したため、環境へマイナスの影響を与えることは避けられません。しかし、海外主催団体が社会的責任のある立場で、SDGsの取り組みや環境負荷を軽減する取り組みを日本でも実施するという方針を固め、JCDやホテルが日本市場における課題を解決しながら、その要望に全力で応えたことで、「持続可能(サステナブル)な研修」を実施することが可能となりました。

    日本でもMICEMeeting(会議・研修)、Incentive (報奨)、Convention(国際会議・学会)、ExhibitionまたはEvent(展示会・イベント)業界においては、「持続可能性」が推進されており、今後、主催する企業・団体は、MICEサステナビリティを意識した企画・運営が求められるようになります。JCDも会議やイベントの企画・運営を通じて、持続可能な社会の実現に貢献できればと思っております。

グランドニッコー東京  台場

グランドニッコー東京 台場は国内外に展開しているニッコー・ホテルズ・インターナショナルにおける最上位ブランドとして開業以来、周年記念や株主総会、インセンティブ、展示会、役員のオフサイトミーティングなど様々なご案件やご要望にお応えし、数多くの実績とご指示を頂いております。
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