MICEサステナビリティ:ウェビナーレポート:SDGsを意識した、より持続可能な会議・イベントを実施するには

会議やイベントの企画・運営を手がけるJTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、主催者である企業・団体のSDGsの達成に向けた取り組みへの支援を行っております。「経済的」「文化社会的」「環境的」視点において、専門的な知識を有するスタッフが様々な企画や運営をサポートすることで、企業・団体の担当者様とともにMICE サステナビリティを推進しています。

2021年318日、JCDが主催したイベントサステナビリティに関するウェビナーレポートを紹介します。
<講演者Mr. Guy Bigwood監修>

 

ウェビナー:サステナビリティのパイオニアが語る「世界のSDGs最前線」

sdgs webinar

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開催日:  2021318日(木)
タイトル: サステナビリティパイオニアが語る 世界のSDGs最前線
      「リジェネレーティブ革命:イベント運営のための新しいパラダイム」
講演者:  Mr. Guy Bigwood,
      Managing Director and Chief Changemaker,
      Global Destinations Sustainability Movement社
主催者:  JCDイベント事務局 
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気候変動、新型コロナウィルス感染症の影響によって、サステナビリティへの関心が高まる

  • 気候変動や新型コロナウィルス感染症によるパンデミックなどの影響により、私たちは300年の歴史の中において、社会的・経済的・環境的に最大の変化の中にいます。それにより、私たちの地域、コミュニティ、企業、そして生活も変化しています。例えば;

  • ・リモートワーク(テレワーク):働き方の変革
    ・移動時間の短縮:パンデミックによる外出制限
    ・地方/地域の再活性:企業が地方へ移転するなど、地方回帰が促進
    ・再フォーカス:私たちにとって何が重要かを再認識する機会

    などです。

    新型コロナウィルス感染症の影響により私たちの日常はどれだけ脆弱であるかを認識しており、自然災害などを通じて自然がいかに重要で偉大であるかを再認識していますが、その自然においても気候変動は大きな問題です。この問題の解決に向けて政治も動いており、例えばアメリカは大統領が気候と環境に関する行政命令に署名し、日本は2050年までにカーボンニュートラル(*)を目指すと宣言し、中国も同様に2060年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。

    また、株式市場においても変化が起きています。サステナブルなファンドへの投資が増加しており、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))の評価が高い企業の90%は、より良い投資機会を得られています。(Source: MSCI, FTSE/Russell/Bloomberg; BP; State Street Global Advisors; all calculations by State Street Global Advisors

    欧米ではビジネス渡航など飛行機に乗ることを控える運動が起こっています。

    旅行者の53%はサステナブルな旅行をしたい、67%は訪問先である地域の回復支援する旅行を選択したいと回答しており、責任ある旅行への関心が高まっています。(Source: 2021 Future of Travel Repoart-Booking.com, 20,000 respondents

    そして、イベント業界においては、20191500のイベント主催者の97%は、サステナビリティを実践していると回答し(Source: IMEX-Marriott #Natureworks Research May 2020)、イベント関係者の96%は、サステナビリティを重要または極めて重要と回答しています。(Source: IMEX-Marriott #Natureworks Research October 2020

    *カーボンニュートラル:温室効果ガスの「排出を全体としてゼロ」にすること。「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成することを意味しています。(出典:環境省 地球環境・国際環境協力ウェブサイト:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて)

    サステナビリティの先へ、リジェネレーティブ(*)革命とは

    以前の私たちは、地球から資源を搾取して、利用して、捨てることをしており、これが環境にどのような影響を与えるかを考えていませんでしたが、ここ十数年は、環境への負荷を軽減するように、より循環型のサステナビリティを意識するようになりました。しかし、将来のためにはサステナビリティの先、リジェネレーティブ革命が必要です。リジェネレーティブ革命とは、地球を環境的・社会的・経済的に回復させて、さらに再生成されるようにシフトさせることです。リジェネレーティブとはいうのは、サステナブルとは違い、システムを変えることで、それにより将来の変化に対して、柔軟に機動力を持って適応できるようになります。

    *リジェネレーティブとは、生命が継続的に進化することを促し、より優れた新しい形態になり、変化し続ける生命条件の中で、繁栄するための条件を作り出すことを意味します。(Source: Regenerative Leadership by Giles Hutchins and Laura Storm.

    ▼調査報告書のダウンロードはこちらThe Regenerative Revolution Report-IMEX Marriot 2020, Mr. Guy Bigwood

    会議・イベント運営をより持続可能にするために必要なこと

    会議・イベント運営においては、今後、カーボンゼロ、循環型、地域や人々への利潤の還元などが必要となります。そのためには、資源との関係性を考え直さなければなりません。昔は、地球から様々な資源を搾取し、それを使って商品を作り、作られた商品を使い、そしてその商品を捨てるという、資源を使い捨てにしていました。現在、資源はリサイクルされるようになってきていますが、そのリサイクル率は未だに8.6%と低く、特に食品においては、何百人もの人々が飢えに苦しんでいるにも関わらず、30%が破棄されています。これは世界全体の排出量の6%を占めており、飛行機による排出量の2倍以上に相当する驚異的な数値です。(Source: The Regenerative Revolution: A new Paradigm for event management by Marriot International & IMEX Group

    だからこそ、資源を利用するには循環型経済でなければなりません。例えば、消耗品である携帯電話には、部品ごとに取り換えやアップグレード、修理ができるものがあります。製品の構造自体を変えたり、調達する素材を環境負荷が少ないものに変えたりして、デザインとしてもビジネスとしても、革新的な新たな考え方が生まれています。このような革新的な循環経済の考え方は、会議・イベント運営でも取り入られるべきです。しかしながら、展示会ブースの設営や運営において多くの資源を利用している会議・イベント運営サプライヤーの43%は、このような循環型経済戦略を立ててない回答しており、先進的な循環型経済戦略を立てているのはたったの3.4%でした。(Source: The Regenerative Revolution: A new Paradigm for event management by Marriot International & IMEX Group

    自然界のシステムから学ぶこと

    私たちは自然から多くを学んでいます。例えば、素晴らしい螺旋階段のような建築デザインは、植物からアイディアを得たり、サメの皮膚の構造を真似て応用し、細菌が付きにくい包帯が開発されていたりします。これらをバイオミミクリー(*)といいます。日本にもバイオミミクリーの良い事例があり、それは新幹線です。設計者は振動を抑えるために、カワセミが水中の魚を取るときのスピードに着目し、カワセミのくちばしを真似て応用して、設計に取り入れたと言われています。自然から学んだことにより、日本は世界に誇る速度の新幹線の運行に成功したのです。

    また、自然界では、キノコと木がお互いに利益を与え合う関係の上で、それぞれの種が繁栄しています。山火事の後には新芽が芽吹き、新たな豊かさを生み出す回復力があります。自然界にはこういったシステムがすでに組み込まれています。

    このような自然界のシステムから、私たちは学ぶことが必要です。イベント業界においても、長期的な戦略に切り替えなければなりません。今まではイベントの規模、より多くの参加人数・宿泊者数に注目していましたが、SDGsの観点としてこれからは、質、ウェルネス、誠実さ、利益の還元などはどうしていくのかという目線で考える必要があります。

    *バイオミミクリー:自然界の形態や機能を模倣したり、そこからヒントを得ることで、様々な問題の解決や、画期的な技術革新につながることがあります。これを生きものの真似という意味から、「バイオミミクリー」と言います。(出典:環境省 生物多様性ウェブサイト)

    nature tree forest

    会議・イベントの企画においてSDGs観点で必要な4つの原則と8つのステップ

    ◆4つの原則

    ・廃棄物と汚染の削減:
     例)会場と参加者の宿泊施設が近ければ、バスなど利用しないことでCO2などの排出量を抑える。

    ・製品と材料を使い続ける:
     例)展示場内でのブースの再利用。

    ・包摂性と多様性のためのイベント企画・設計:
     例)より多様性に富んでいればイノベーションが起こる。様々な考え方をイベント企画・設計に組み入れる。

    ・自然システムの再生成:
     例)自然にインスピレーションを受け、デザイン(設計)によって回復し、再生成する。

    ◆8つのステップ 

    ・サプライチェーンを再考する
    ・戦略を再定義する
    ・ブランド体験を再設計する
    ・リジェネレーティブな資源にフォーカスする
    ・資源調達フローを再検討する
    ・インパクト(影響)を報告する
    ・コミュニティに活力を与える
    ・食を通じて自然をリジェネレートさせる

    8つのステップのうち、戦略の再定義について少し説明をします。会議・イベントの企画においては、社会への影響を考え、コミュニティの中で、コミュニティと共に運営していく必要があります。そのためには、調和性、包括性、互恵性、多様性、循環性、回復力といった思考に切り替えて再定義する必要があります。これはSDGsと同様の枠組みです。

    しかしコロナ禍において、そもそもイベントを企画すべきなのか、その企画したイベントにリアルに参加者が集う価値があるのか、オンラインの方が良いのか、などについても検討する必要があります。

    また、リアルに参加者が集うイベントをする場合、主催者、イベント企画運営会社、イベントサプライヤーなどが1つのチームになることで、循環型の戦略を実行することができます。

    8つのステップ:世界の成功事例

    8つのステップのうち、いくつかの成功事例を紹介します。

    ・ブランド体験を再設計する:持続可能なイベントであることを体現するため、イギリスの展示会では、テムズ川のプラスチックを回収して、美しい展示パネルを制作しており、また、その過程や意義を参加者へ伝えています。

    ・食を通じて自然をリジェネレートさせる:バルセロナのイベントのケータリングにおいては、肉を排除して、ベジタリアンフードメニューにしました。食材の野菜は地域の生産者から調達をして、参加者には健康的な食事の提供をしつつ、たい肥化のために残飯の回収を致しました。このたい肥からまた野菜を育て、提供するという循環型のフードチェーンの導入例です。

    ・コミュニティに活力を与える:アイルランドのイベントでは、全スタッフの70%はイベント会場から3km圏内に居住している方を採用しています。これにより、コミュニティと連携してイベントを実施することで、地域の再活性化と移動距離短縮による環境負荷に貢献しています。

    インパクト(影響)を報告する:アメリカのソフトウェア会社では、過去10年間、カンファレンスが与える環境負荷について、開催後に必ず計測をして報告書を作成しています。ICCAInternational Congress and Convention Association)コングレス2019レポートでは、コングレスが与える環境負荷について数値だけでなく、報告書を読む人にとって分かり易く、そして理解できるように、廃棄物の重量を動物の重さに例えて作成しています。

    日本の成功事例と課題

    国際的な大型イベントである東京オリンピック・パラリンピック競技大会の組織委員会(東京2020組織委員会)は、持続可能性に配慮したイベントを運営するためのマネジメントシステムの国際規格であるISO20121(イベントサステナビリティ)の認証を取得しています。持続可能な大会にするために、大会のコンセプト、5つの主要テーマと調達コードを明確に定めており、この5つの主要テーマと取り組みは、20159月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」及び持続可能な開発目標(SDGs)・ターゲットと大きく関連しています。(出典:(公財)東京2020組織委員会 ウェブサイト)

    このように日本においても国際大会ではイベントサステナビリティが推進されていますが、観光とイベントの持続可能性を査定結果では、日本は世界と比較して少し遅れています。しかし、一方で、日本にとっては今が改善できるチャンスでもあります。

     

    GDS-INDEX-JAPAN

    日本へのメッセージ

    日本は世界と比較して、観光とイベントの持続可能性において遅れを取っていますが、コロナ禍において、サステナビリティへの関心が高まり、その知見が向上しています。サステナブルな商品・商材を市場で調達できるようにもなってきました。先に述べたよう、「会議・イベントの企画において必要な4つの原則と8つのステップ」に則り、SDGsの枠組みを利用することで、会議・イベント運営がより持続可能になります。あとは、「リジェネレーティブビジネスこそが、唯一の未来」に向けた、私たちの行動次第です。

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