MICEサステナビリティ:持続可能な取り組み事例:調達①:飲食関連・ケータリング



会議やイベントの企画・運営を手がけるJTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、主催者である企業・団体のSDGsの達成に向けた取り組みへの支援を行っております。「経済的」「文化社会的」「環境的」視点において、専門的な知識を有するスタッフが様々な企画や運営をサポートすることで、企業・団体の担当者様とともにMICE サステナビリティを推進しています。

JCDで担当した、持続可能な会議・イベント開催における具体的な調達の取り組み事例を紹介します。

持続可能な調達方針

会議やイベントを運営するには、さまざまな物品やサービスをサプライヤー/ビジネスパートナーから仕入れなければなりません。持続可能な会議・イベントを実施するには、主催者が「持続可能な調達方針」を定め、調達基準、運用方法を策定し、企画・運営会社はそれに則りながら運営する必要があります。企画・運営会社が提供するサービスの種類は主に以下のようになり、サービスごとにサプライヤー/ビジネスパートナーと協議・調整をして、主催者が定める持続可能な調達方針を実行する必要があります。

・飲食関連:ケータリング
・制作/装飾関連
 ▼コラム:持続可能な取り組み事例:調達③:制作/装飾関連
・エネルギー/電力関連
 ▼コラム:持続可能な取り組み事例:調達②:エネルギー:会場電力関連とCO2ゼロMICE
・輸送や宿泊関連

今回は、飲食関連:ケータリングの調達方針について詳しく紹介します。

持続可能な飲食関連:ケータリングの調達方針

飲食関連のケータリングの調達方針では、主に以下のようなことが含まれており、それらを実行することでSDGsの取り組みにもつながります。

・地域経済への貢献CO2排出量の削減

・文化継承支援

・脱プラで、環境にやさしい物品による提供

・廃棄となるごみの削減

JCDでは、主催者の方針をもとに調達基準・運用方法から提案し、実施します。

sustainable purchasing

イベント活用事例①:地産地消によるCO2排出量の削減と地域経済への貢献

フードマイル/マイレージ(食料の輸送量と距離)を削減することで、CO2排出量を削減することができ、環境負荷軽減に貢献ができます。具体的には、会議・イベントを実施する地域で生産される食材をフードロスにならないよう適量を仕入れて輸送距離を短くします。仕入れた食材はその地域の会場で消費するので、必然的に地産地消に取り組むことができ、地域経済への貢献にもつながります。また、地域で生産される食材が、江戸東京野菜(*1)のような伝統野菜である場合には文化継承支援にもつながります。その他にも、たとえば、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでも使用され、最近スーパーでも販売しているMSCASC認証(*2)を取得したシーフードなど、持続可能性を証明する各種認証を取得した食材を選択することで、より環境に配慮しながら持続可能性を支援することができます。

(*1)江戸東京野菜とは:江戸から昭和40年頃(1965)にかけて現在の東京周辺でつくられていた、伝統野菜のこと。(出典:(公財)東京都農林水産振興財団 TOKYO GROWNウェブサイト)

(*2MSC認証とは:水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証。(出典:Marine Stewardship Council ウェブサイト)

ASC認証とは:水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が管理運営する養殖に関する国際認証制度で、自然環境の汚染や資源の過剰利用の防止に加え、労働者や地域住民との誠実な関係構築を求めている。(出典:養殖版海のエコラベル「ASC認証」についてWWFウェブサイト)

menu card 食材輸送距離を短くしCO2排出量を削減することで地球温暖化防止に努めた事例。メニューに表示することで参加者の意識改革にもつながる。

イベント活用事例②:環境にやさしい素材を厳選し、環境負荷低減に貢献

ケータリングに欠かせないグラスとカップ&ソーサーやカラトリーは、繰り返し使えるものを用意します。ただし、会議・イベントが野外で、洗い場が近くにないなどの状況によっては、使い捨ての方が運用し易い場合があります。その場合には、脱プラの取り組みのように、まずプラスチック製は使わず、紙製に。紙製でも、森林認証を取得しているもの、バカス(*3)のような非木材で作られたものや、土に還るような循環性のあるものを仕入れることで、より環境にやさしい調達になります。

(*3)サトウキビの糖汁を搾り取ったあとのカス・繊維

WASARA 非木材で作られた紙の器、WASARA。使用後のWASARAは微生物の働きにより90日でたい肥化し、このたい肥から野菜を育てることができる 

イベント活用事例③:廃棄ごみを削減することによる環境負荷低減と社会への貢献


ごみの削減については、提供の仕方をバルク提供にすることで、不要なパッケージ(包装)=ごみを削減することができます。その他にも、料理メニューを、宗教や食の嗜好による食事制限に対応できるようにベジタリアンメニューをベースにして、ある程度平等に誰でも召し上がれるようにし、その取り組みにより実質的にフードロスに貢献できるようになります。ベジタリアンメニューにすることは、フードロスに貢献するだけでなく、家畜によるCO2やメタンガスの排出量を削減することができ、温室効果ガス削減にも貢献ができます。

また、調達した食材が万が一余ってしまい、その食材が未使用で賞味期限に問題がない場合は、地元のフードバンクなどへ寄付をすると社会貢献につながります。

このように会議・イベントを運営する際の仕入れは、サプライヤー/ビジネスパートナーの選択と協力により、すぐに取り組める事例は多くあります。

MICE(Meeting(会議・研修)、Incentive (報奨)、Convention(国際会議・学会)、ExhibitionまたはEvent(展示会・イベント)業界においては、「持続可能性」が推進されており、今後、主催する企業・団体は、MICEサステナビリティを意識した企画・運営が求められるようになります。そのためには、しっかりとした持続可能な調達方針を定めておく必要があり、JCDはその方針をもとに調達基準・運用方法から提案し、実施してまいります。

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