MICEサステナビリティ: SDGsの 取り組み イベント事例:調達③:制作/装飾関連
会議やイベントの企画・運営を手がけるJTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、主催者である企業・団体のSDGsの達成に向けた取り組みへの支援を行っております。「経済的」「文化社会的」「環境的」視点において、専門的な知識を有するスタッフが様々な企画や運営をサポートすることで、企業・団体の担当者様とともにMICE サステナビリティを推進しています。
JCDで担当した、持続可能な会議・イベント開催における具体的な調達の取り組み事例を紹介します。
持続可能な調達方針
会議やイベントを運営するには、さまざまな物品やサービスをサプライヤー/ビジネスパートナーから仕入れなければなりません。持続可能な会議・イベントを実施するには、主催者が「持続可能な調達方針」を定め、調達基準、運用方法を策定し、企画・運営会社はそれに則りながら運営する必要があります。企画・運営会社が提供するサービスの種類は主に以下のようになり、サービスごとにサプライヤー/ビジネスパートナーと協議・調整をして、主催者が定める持続可能な調達方針を実行する必要があります。
・飲食関連:ケータリング
▼コラム:持続可能な取り組み事例:調達①:飲食・ケータリング関連・制作/装飾関連
・エネルギー/電力関連
・輸送や宿泊関連
今回は、「制作/装飾関連の調達方針」について詳しく紹介します。
持続可能な制作/装飾関連:制作物の調達方針
制作/装飾関連の調達方針では、主に以下のようなことが含まれており、それらを実行することでSDGsの取り組みにもつながります。
・廃棄量の削減
・再利用、リサイクル率の向上
・制作物の輸送距離の削減
・環境にやさしい素材の選択
・物品等の寄付を見据えた素材調達 など
JCDでは、主催者の方針をもとにサステナブルな調達基準・運用方法から提案し、実施します。
イベント活用事例①:サステナブルなデザイン設計と演出、3Rの徹底で、廃棄量を大幅削減し、環境負荷低減に貢献
会議やイベントにおける制作/装飾関連は、主催者である企業や団体のブランディングに深く関係するため、インパクト重視で華美なもの、また、そのイベントのためだけにオリジナルで制作されることが多くありました。比較的大型で制作数も多くなるものは、例えば、受付やその周辺で露出する看板および導線サイン、ステージとその周辺で使われる造作・装飾物等です。これらの制作/装飾物は、多くの資源を使用するため、持続可能な制作物とするために、まず「デザイン設計」と「演出」について十分検討をした上で、「3R」に沿って検討をします。
■ デザイン設計:環境負荷を軽減できるようなデザイン設計・施工になっているか、など。
■ 演出:環境負荷を軽減や、文化芸術に貢献できるようなっているか、など。
■ 3R:リデュース、リユース、リサイクルの徹底ができているか。例えば;
・ Reduce : リデュース :新たに制作する必要性があるか。
・ Reuse:リユース:再利用できる製品か。過去使用した制作物で、再利用できるものはないか。
・ Recycle:リサイクル:リサイクル可能な素材か。
具体的には、デザイン設計の骨組みにおいて、再利用およびリサイクルが可能な素材の選択です。木材であれば、環境にやさしい間伐材や森林認証のものを利用し、何度も再利用しやすいシンプル構造にしたり、リサイクル率が高いアルミ製であれば、加工がしやすいという利点から多様で独創的なデザインにすることも可能です。骨組み以外にイベント独自性をアピールする表示面については、木材やプラスチックの板を使用せず、リサイクルが可能な生地を使ってデザイン(印刷)したり、そこへ動画や静止画を投影したりと様々な演出が可能となります。これにより、制作を通じて最終的に廃棄するものを大幅に削減することができます。
さらに、アルミ製や布等の素材は比較的軽量で、会議・イベント会場の現場で組み立てができることから、トラックなどの輸送車両の小型化が可能となり、輸送によるCO2排出量の削減にも貢献できます。
イベント活用事例②:サステナブルな演出:テーブル装飾や環境演出に欠かせない生花などの装飾
会議・イベント会場を華やかに演出するために選択される素材の1つが、「生花」です。しかし、生花は、農作物と一緒で季節変動に左右されやすく、生育状況によっては温室を人工的に温めたり、逆に冷やしたりする必要があり、また外国(特に日本と季節が逆になる南半球)から輸入される種類も多いため、温室効果ガスを多く排出し環境へ負荷をかけています。また、切り花の寿命は短いため、特に会議・イベント開催終了後は、ほとんど廃棄されています。
海外の会議・イベントの環境演出においては、「生花」の代わりに、枯渇することがなく再利用が可能なサステナブル素材として、流木や小石を利用したり、大量の水を使用する必要がない植物としてエアプランツを利用することがあります。しかし、会議・イベント開催会場の雰囲気や、主催者のコンセプト・ブランディングを考慮すると、必ずしもこれらの素材が最適ではない場合には、「生花」を利用しますが、可能な限り持続可能な方法を検討します。例えば、季節の生花や、地元の生花農園から率先して調達することで、生育や輸送過程でのCO2排出量を減らすことができます。また、廃棄処分になる手前の花を利用したドライフラワーや、間伐材などの枝を生花と併用して利用すれば、ドライフラワーや枝などは再利用ができるので、最終的に廃棄する生花の量を減らすことができます。
先日、株式会社ゴトウ花店、ゴトウフローリスト 帝国ホテル店とテーブル演出の生花について議論を交わし時に、球根花の提案がありました。球根は毎年開花=再生するので、会議・イベント開催後は、参加者に持ち帰っていただき再利用いただけるというものです。まさに、花の性質や特徴をよく知る専門家ならではの素晴らしい提案です。
また、生花は生ゴミ同様、コンポスト化が可能です。生成された「たい肥」から花を育てるといったサーキュレーションができれば、より持続可能な生花栽培にも貢献できます。
イベント活用事例③:制作物の寄付や、制作物の再利用を通じて地域住民へ社会貢献
先に述べたよう、制作物の多くは、主催者である企業や団体のブランディングに深く関係するため、インパクト重視で華美なもの、またオリジナルで制作される傾向があります。「デザイン設計」と「演出」について十分検討をし、「3R」に沿って調達方針を見直したとしても、どうしても新たな制作物が必要な場合があります。その場合は、会議・イベント開催終了後に、その新たな制作物を「必要とする」地域の公的機関や福祉施設へ寄付をしましょう。または、その新たな制作物を再利用しながら、地域の方々と共にSDGsの取り組みを一緒に学ぶワークショップを開催するなどしてはいかがでしょうか。
具体的には、ステージ造作などで木材を利用した場合などは、それらを本棚などへ加工して必要とされる公的機関や福祉施設へ寄付をします。また、演出で使用した生花をドライフラワーにして、それらを利用した手作りアクセサリーワークショップを地域住民向けに開催すれば、参加者は楽しみながらSDGsへの取り組みについて学べる機会となりますし、作成したアクセサリーをチャリティー販売することで、資金的に社会貢献をすることができます。
このように、会議・イベントを運営する際の「制作/装飾関連」は大型で大量に資源を使用することから、調達方針において、まず、廃棄量を削減する必要があります。サプライヤー/ビジネスパートナー共に、「デザイン設計」と「演出」について十分検討をし、「3R」に取り組みことで、サステナブルな会議・イベントを開催することができます。JCDは主催者と共に、持続可能な調達方針、調達基準・運用方法を策定し、今後もMICEサステナビリティを推進してまいります。
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▼SDGsとMICEサステナビリティコラム
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■持続可能な調達方針
▼ウェビナーレポート「世界のSDGs最前線」
▼サステナブルなイベント事例:VAIO株式会社様:新商品発表会 「CO2ゼロMICE」
▼「CO2ゼロMICE」の仕組みについて
▼JTBコミュニケーションデザイン:サステナビリティビジョン